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Cross Destiny
【ファンタジー その他小説】

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Cross Destiny
〜神竜の牙〜A
-38

ホーリ城 地下の巨大な実験施設で、
全長10メートル程の丸い硝子の容器に入った培養液。
それに浸かる金色の竜。それを見ながら話し込む二つの影。
「アレスター様 やはり駄目です。神竜は目覚めません。どうしても漆黒の竜人の魔力が必要なようです。」
黒ぶち眼鏡をした男がアレスターに報告する。
「・・・フォルツやはりお前が」


場面は変わりジェラルド城の王座。
「ホーリ王国国王アレスターが!!何かの間違えじゃないのか?」
アルスは驚きの表情で聞き返す。
国民の信頼を集め、無争宣言まで出した人徳の厚い王アレスターが神竜を復活させようとしているなどと言われたからだ。しかしフォルツには心当たりがあった。
以前ルーンの塞で姿を見せ、自分の力を必要だと言われたからだ。
「一体・・・何のために」
つぶやくように尋ねるフォルツ。
「信じるのかフォルツ!?」
そしてそれを聞いてアルスが尋ねる。
「会ったんだ。」
「え?」
「ルーンの塞でアシェルに連れられて行った先にアレスターがいた。」
「馬鹿な!!」
それを聞き今度はデェルフェムート達が驚く。
「そしてやつは俺に力を貸してほしいとだけ言った。
俺が考えさせて欲しいと言ったらすぐにルナを返してくれて俺もすぐに戻ることができた。」
「そんなことが・・・なんで黙ってた!?いやそれよりアレスターがそんな大胆な行動に出るとは!!」
髪をかき上げるヴェイル。
「それにしても何でその時奴はフォルツをさらわなかったんだ?」
アルスは疑問を投げ掛けた。
「フォルツが自ら協力しないと意味が無いからだ。
魔力だけは本人が出そうと思わなきゃ出ない。
無理矢理連れて行っても意味が無いからだろう。奴はこれからフォルツが神竜復活に協力するように仕向けてくる。」
「そう、それを防ぐためにお前に真実を伝えたんだ。」
「馬鹿な!!神竜なんかが復活したら一体何百万人の人が死ぬんだよ!!そんなものに協力するはずが無い!!」
フォルツははっきりと言い放った。

「ああ、そうだな。
だがアレスターがそんな行動に出た以上、打って出てくるのは時間の問題だ。」
「え?」
「奴は今、我が国と戦っているヒーティアと同盟を結び、宣戦布告をしてくる筈だ。」
「馬鹿な・・・ホーリは100年前にレディウスが無争宣言を出しているのに。」
「恐らく神竜復活の計画はその時から始まっていたのだ。信頼を得ていればそういった計画も表に出にくくなる。
事実我々もそれを知ったのが最近なのだ。
そして戦争を起こしても神竜を復活させても信頼を失わない大義名分は既にできている」
「それは?」
「打倒ジェラルドだよ。」
「!!」
「お前達はジェラルドの黒い噂をたくさん聞いたことがある筈だ。」
それを聞いてアルス達はハッとした。
「魔物を作り出し、他国を権力と恐怖で支配し、
また従わない国には武力で制圧する。
など聞いたことはあるだろ?」
「・・・・・ああ」
「そんなものは全て嘘だ!!閣下は誰よりも国のため、世界の為に尽くしてきた。
そして魔物を作り出しているのはホーリー、昔あったジェラルドとホーリー、リィズ、そして現在のヒーティアとの戦争はいずれも相手側が宣戦布告をしてきたものだ!」
拳を固くしながら熱く語るヴェザード。
「じゃあ何故そんな噂が?」
「ていのいい情報操作さ。」
ヴェイルは少しだけ怒りをあらわにする。
「いつだって権力の強いものは疎まれる。
そして悪役のイメージを植え付けるのも簡単なんだ。権力の強い者がどんなに良い者だとしてもな。」
確かにという表情をするアルス達。
事実アルス達はジェラルドのこともデェルフェムートのことも、大して知りもしないにもかかわらず黒い噂を信じて疑わなかった。


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