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■LOVE PHANTOM ■
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■LOVE PHANTOM■九章■-1

「おっかしいなぁ。財布ないよぉ」
靜里は辺りを見渡した。
テレビの上、本棚、キッチン、冷蔵庫のうえ、電話の横、ソファー、玄関、思いつく所すべて探したのだが、どうしても財布は見つからず、靜里は首を傾げた。
「何でないんだろ。うーん」
そして、その場にしゃがみこみ、テーブルの上にある新聞を寄せて見る、が、やはり財布は見当たらない。
探すところが無くなってしまった靜里は、しゃがんだまま、ふと横の棚に乗っている、小さな箱へ目をやった。叶が靜里へ贈ろうとした指輪である。
二人の生活が始まってからも、叶は幾度となく靜里へこれをわたそうとしてきた。
だが、その度に彼女は心を鬼にして断ってきた。
それには幾つかの理由がある。
一つは叶自身が自分を好きなのではなくて、やはり先祖の記憶がそうさせていると思ったこと。そしてもう一つは、彼女が「想い」に貪欲なことだった。
二つ目は靜里自身にとっても意外な内容だった。叶に対して自分が、これ程までに魅せられているとは、そしてそれによって、これ程叶自身の本当の愛情を求めているとは靜里本人も、思ってもみなかったことだった。
「いつか、心から私を好きになってくれたら、喜んでもらうからね」
うっすら微笑みながら、靜里は箱を手に取り、両方の手のひらでそれを包み、抱き締めるようにして胸の中へよせた。
「叶・・」
と、その時、玄関の方からコツコツと足音が聞こえてきた。靜里は夢から覚めたような顔付きで、はっと音のする方を向き、立ち上がる。
足音は彼女の部屋の前でぴたりと止まった。
「叶?」
呼びかけに返事はなく、不審に思いながらも、靜里は玄関へと足を運んだ。半開きのドアの間からは冷たい風と一緒に、雪が少し入り込んでいる。
「ちゃんと締めてなかったから・・空耳かな、風とか」
そう言って靜里が、ノブへ手をまわそうとした時だった。ゆっくりと、ひとりでにドアが開き、驚いた靜里は手を引っ込め、息を飲んだ。冷たい風と雪が、強引に中へ入り込み、靜里の、長い髪の毛をほどいてゆく。
「・・あ・・」
そして彼女の目の前には、那覇の姿があった。堂々と、靜里を見つめ、そして少し笑って見せている。靜里は後ずさり、後ろの壁へと背をつけた。
すると那覇は一歩前へ踏み込み、言った。
「やっと見つけた」
「・・え?」
聞こえないほどの小さな声で、靜里が言う。
「我が妻よ・・・やっとの再会だったな」
那覇は土足のまま、あがり、靜里へ近づいてくる。靜里は涙ぐみながら、同化するように強く、壁へ背中をすりよせた。それでも那覇は、関係ないという様子で彼女へ近づき、そして靜里の顔を挟むようにして、両腕を壁につき、ぐいっと彼女の顔へ自分の顔を近づける。
「やだっ・・いやだ・・」
完全におびえている靜里は、肩と一緒に声も震え、ついには涙をこぼすまでになっていた。何度も何度も首を振り、何かを口にしようとするが、恐怖のためうまく声が出てこない。
「・・・目が変わってないな。綺麗なままだ」
那覇は、そう言いながら唇に触れようと、自分の手を彼女の顔の前へもってきた。
すると靜里は、その一瞬の隙を狙い、奥の部屋へと逃げ込み、二つの部屋を区切っている扉を力いっぱい閉めると、そこへ自分の全体重を乗せた。
(誰、誰なのあの人)
圧迫される空間の中で靜里は、息を切らし、不安と恐怖が交差する。
「何故逃げる?」
那覇は静かに言った。靜里はその声を背に、ただ聞いているしかない。目を閉じ、口を噤む。


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