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■LOVE PHANTOM ■
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■LOVE PHANTOM■八章■-3

呼吸は細かく切れ、視界はぼんやりと白く膜が覆う。激痛は麻痺に変わり、叶はゆっくりと目を閉じた。すると何か熱いものが、内から込み上げ、叶は再び目を見開き、天へ向けて咳き込んだ。真っ赤な鮮血が、宙に吐き出され、飛び散り、そして自分の顔を汚す。 これが実力の差か・・・と、叶は心の中で呟き、死を覚悟した。何故、どんな理由で自分が襲われたかは分からない。だが、那覇が、自分を殺しに来たことだけは不思議に感じた。
叶の視線は、ゆっくりと那覇の方へ向き、そこで止まる。那覇は、倒れている叶を見下ろすと、彼めがけて唾を吐いた。
「お前はもう用済みだ。この街を去れ・・・ならば命まではとらん。だが二度目はないぞ、もしも次にお前を見たらその時は、殺す」
そう言い残すと那覇は叶へ背を向け、静かに歩きだした。薄れていく那覇の姿を追いながら、叶は必死に浅くなった呼吸を取り戻し、かすれた声で言った。
「貴様の・・・目的は・・・」
叶のとぎれとぎれの質問に、那覇はぴたりと足を止めると、背を向けたまま言った。
「転生した、我が妻を迎えに来た」
「!」
那覇の言葉に、叶はハッとした。奴が何者なのか、何故自分を襲ったのか、すべてこの一言ではっきりしたのだ。それだけではない。自分と同種だと感じたことや、奴がヴラド・ツェペシュの事を知っていたことも、すべてこの一言で片付けられた。
しかし、いまさら那覇を追おうとしても、遅かった。首から下が、まるで他人の物のように重く、動かない。 叶は薄れてゆく意識の中、一言靜里の名を呼ぶと、静かに重たいまぶたを綴じた。


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