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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-38

「みなさん、大変お待たせしましたー! ただ今より清櫻祭特別イベント2‐Aと2‐Cによるライブ対決を行います! そしてこのイベントは気に入った演奏をしたクラスに投票してもらいますが、その票はもちろん最優秀クラスへの投票に直結します」
ステージ上で安奈が前説をしているだけにも拘わらず異様な盛り上がりを見せる観客席。
そんな様子を舞台袖の陰から見ていたケイと香織達は暫く呆然とその光景を眺めていた。
「いやぁ、これはすごいねぇ。なんか緊張してきちゃうね、ケイ」
微妙に強張った表情のケイの横で香織がちょっとだけ笑顔を見せると、いつかの撮影の時みたいにケイの脇腹をくすぐってきたのだ。
「わきゃっ!? か、香織ちゃん、いきなり何するのっ! だ、ダメッ、あはははは…」
脇をくすぐられ悶絶するケイと、更に責める香織の姿は舞台袖にいる生徒にしか見えなかったが、香織の責める声とケイの悶える様な笑い声はある程度の周囲には筒抜けだった。
「あーっ! ケイ見っけ」
「オ前タチ、ナニヲケッタイナコトヲシテルンダ」
声はすれども姿は見えず。
ケイと香織が辺りを見渡すと背後に頭にモミジを乗せた百合が浮いていた。
「ほほう…これはまた面妖な」
二人の非常識な姿を初めて見る割に意外と冷静な加奈子に対して百合のテンションは上がりっぱなしだったのだ。
「う〜っ、ケイと香織ちゃんなんか楽しそうだなぁ。私もまぜてぇ」
そう言うと百合は二人に飛び付いた。
「「ゆ、百合ちゃん!?」」
ケイと香織の驚いた声がハモると百合は嬉しそうに返事をして二人の手を取るとブンブン振り回した。
「香織ちゃん、来ちゃいました。てか、今日という日を生まれてこのかた、いや私既に死んでますけど、これほど待ち遠しいと思ったことはないですよ。とーっても楽しみにしてたんだからガンバってね!」
百合がまくし立てる様に喋るのをケイをはじめとするその場にいたみんなが呆然と見ていた。
「百合、ソロソロ始マルミタイダゾ」
百合の頭の上にいるモミジがそう告げると、百合は慌てて二人に「ガンバってねぇ」と言うとその場を立ち去った。
「なんだったの? 今のって…」
なんとか疑問を言葉にする加奈子に香織は苦笑しながら百合と仲良くなった経緯を話したのだった。
その頃、反対側の舞台袖にいた美弥を除いたC組のメンバーはあまりの観客の多さに緊張と戸惑いを隠せないでいた。
「美弥ぁ、私達大丈夫かなぁ?」
「何言ってんの、貴女達だって今日まで必死に練習してきたんでしょ。もっと自信を持ちなさい! それに私が選んだメンバーなんだから大丈夫よ」
極度の緊張で固くなっているメンバーの一人の言葉を美弥は自信満々と云わんばかりの強気な態度で言葉を返すとにっこり笑ってその子の肩をポンと叩いたのだった。
「みんな、そんなに固くならなくても大丈夫よ。ちゃんとレッスン通りやってくれればあとは私が引っ張ってあげるから」
表面的には自信満々で余裕がある様に見える美弥だったが、内心では香織とケイに対して不安が拭えないでいたのだ。
それ故か美弥は昨晩、ステージにこっそりと仕掛けを施していたのだった。
「ふぅ…本当ならこんなことしたくはなかったんですけど……」
美弥が誰にも聞こえないくらいの声でポツリと呟くと実行委員の腕章をした男子生徒がステージに上がって準備をするよう叫んだ。
 
ステージ前の客席はまさに満員御礼の状態で学園の生徒達の他に外部からの観客も多数見受けられた。
それはある意味予想通りの展開であり、観客のほとんどの目的は生で美弥とケイを見にきた人達が大半であった。
そんな中、美弥達2‐Cのステージが始まった。
美弥達がステージに上がると同時に大勢の男の歓声が上がった。
美弥は職業柄そういった歓声への耐性は出来ていたのだが、同じステージにいる千晶を始めとするクラスメイト達はこの様な状況には慣れていないので一気に表情が強張ってしまったのだ。


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