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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-30

「ケイさん大丈夫ですか? うちのクラスの珍獣が迷惑をかけてすみません」
慎也はにこやかに微笑みながらへたり込んでいるケイの手を取り立たせてくれたのだった。
それに対しケイは「あ、ありがとう」と笑顔で答えながら内心では、『これがモテ男の余裕なのか。確かに幸司とは違うな』等と考えていたのだった。
手を繋いだまま微笑むケイと慎也の間に憮然とした顔をした香織が二人の間に割り込み、いきなりケイの腕を掴むとステージ衣装が乗っている机を指差した。
「ケイ、奈津子さんからあの衣装のこと聞いてた?」
「い、いえ、聞いてないけど…衣装がどうかしたの、香織ちゃん」
香織の問いかけに少しうろたえながら答えるケイなのだが、衣装の現物については圭介の姿の時に既に見ていたのでほんの気持ちだけショックが緩和されていたのだった。
「これ見てよ!」と言いながらケイを引っ張り衣装が置いてある机まで歩くと無造作に衣装を広げてみせたのだ。
その衣装を見せられ露出度の高さを嫌でも認識をさせられると、ケイの顔は恥ずかしさでみるみる朱くなっていくのだった。
その衣装は見るからに今まで着てきた服とは違うものだった。
スカートの丈は脚の露出を意識してか極端に短いわ、ヘソ出しになってるわ、胸の谷間は元々ないから隠される様になってはいるもののとにかく露出可能な場所は出来るだけ出しますって感じの衣装なのだ。
これを学園のみんなの前で着なきゃいけないのかと思うと頭が痛くなりそうなケイだった。
「奈津ねぇ…」
ケイが思わず呟いた名前の主の悪魔の微笑が脳裏に浮かぶ。
それについては香織も同じだったみたいで困惑の表情がそれを物語っていた。
そんな二人をよそに衣装を改めて見て盛り上がるクラスメイト達だったが、その中から加奈子がケイと香織の肩に手を乗せ呟く。
「さて、二人ともこれから衣装合わせをしてもらいましょうか。時間もあまりないしね…」
加奈子はそう言うとケイと香織にそれぞれの衣装を渡し、更衣室に行くように言った。
 
ピンチである。
よりによって香織と同じ更衣室での着替えだ。
見た目は完璧に女性としての顔とスタイルを持つケイだが、生物学上の性別は間違いなく男なのだ。
いわゆる中身は圭介なのである。
圭介だって健全な男子であるのだから、更衣室で女の子と二人で生着替えなんてハプニングを意識しない訳がないのは明白な事実であった。
そして何よりケイが男だとバレないようにしなければいけないのである。
ケイは心の中の焦りを表情に出すことなく、焦りながらも頭をフル回転させ無い知恵を絞った。
それから、ケイと香織はそれぞれの衣装を持ち女子更衣室へ向け廊下を歩いていると香織がケイに提案を持ち掛けてきた。
「ケイ、更衣室に着いたら先に着替えてもらえないかな」
「それはいいんだけどなんで?」
ケイにとっては願ってもない提案だったが、一応その提案の理由を聞いた。
「いやね、ケイって有名人じゃない。だからケイの着替えを覗こうなんて不心得者が現れないとも限らないからあたしが入口で見張ってるよ」
香織はにこやかに笑うと女子更衣室のドアを指差し、ドアを開けると中に入るのだった。
「うん、異常なし。じゃあ、ケイは着替えちゃってもらえる」
更衣室をざっと見回した香織が異変がないのを確認するとケイを残し更衣室を出ていった。
「ふぅ…一時はどうなるかと思ったけど、なるようになるもんだな」
更衣室に一人残されたケイは一人呟くと着ている服を脱ぎ学園祭用の衣装に着替え始めるのだった。
ケイは衣装に着替え終わると、先程教室で加奈子がクラスの男子から借りて調達したコートを羽織る。
一応、学園祭当日まで衣装は秘密にしておきたいという加奈子の配慮からのものだ。
ケイの着替えが終わり更衣室から出るとドアの横に香織が待っており、そして廊下には幸司をはじめとするクラスの男子が二、三人転がっていた。


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