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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-29

そんなことがありながら放課後になると圭介はクラスのみんなに「急用が出来たから」と平謝りをして教室を出ると急いで奈津子の待つ裏門へ駆け出した。
圭介が裏門に着いてしばらく待つと見慣れた赤いマセラティが走ってきて圭介の目の前で停まると中から奈津子に車に乗るよう言われ、指示に従い車に乗るとおもむろに服を脱がされ女物の服を渡された。
圭介は仕方ないといった感じで奈津子に渡された服に袖を通し着替えが終わると奈津子は圭介に軽くメイクを施したのだった。
奈津子がメイクを始めて十数分が経ち、圭介の眼前から奈津子の顔が離れる頃には圭介は既にケイの姿になっていた。
「ほい、出来上がりっと。じゃあ、後はしっかりね」
奈津子は圭介を車から降ろすと先程まで着ていた学園の制服や鞄を車の中に置いたまま車を出してしまったのだ。
ケイの姿のまま学園の裏門に一人残された圭介はやれやれとため息をついて足取り重く学園に戻った。
しかし、ケイの姿になった以上は鬱々としていられないので、圭介は開き直って来客用の入口から校舎に入ろうとしたが、当然ながら学園の生徒達に見つかってしまったので大急ぎで香織達のいる教室へ走ることになったのだ。
 
開いていた2‐Aの教室の入口へケイは勢いよく飛び込むとおもむろにドアを閉めた。
「はぁはぁはぁ…なんなの一体……」
息も絶え絶えといった感じでドアを背にずるずるとへたり込むケイを見て香織は驚きの表情で彼女を見て声をかけた。
「ケイ!? 一体どうしたってのよ」
「……いや、校舎に入った途端にみんなに追いかけ回されて必死に逃げてたのよ…」
あまり目立たない様にとラフな服で来たケイなのだったが、その効果は全くといって良い程に効果がなかったのだ。
それは教室のドア一枚を隔てた向こう側からの声が立証していた。
ドアの向こうから「ケイさ〜ん」とか「お姉さま〜」等と様々な黄色い声が飛び交っていた。
「あはは…た、大変だったね。お疲れさま、ケイ」
廊下の様子に引き攣った笑いを見せる香織がケイを労うとクラスの女の子が小さいペットボトルに入ったお茶を持ってきてくれたのだった。
お茶を受け取り「ありがとう」とケイがお礼を言うと、こちらでもキャーキャーと女の子達が嬉しそうに騒ぎ出した。
クラスの女の子達が嬉しそうにしているのとは別に圭介が帰る時も保健室から戻らなかった幸司が復活しており、どこからとなく現れケイに抱き着こうとして飛びかかって来たのだ。
「ケイさーん! 会いたかったですよー!!」
叫びながら迫る幸司に拳を握りしめ迎撃しようとするケイよりも早く反応したのがケイのそばにいたクラスの女子達で、いち早く幸司を押さえ付けると有無を言わさず袋叩きにする。
その光景を見ながらケイを筆頭にクラスの男子は乾いた笑いを見せながら恐怖したのだった。
「全く…何度痛め付けられても懲りない男だな」
袋叩きにされた後、手近にあった紐で身体を縛られ椅子に座らされている幸司に加奈子は呆れたといった顔で言い放つのだった。
「バッカ、ベッピンさんに声をかけないで男やってられっかってーの!」
ボロボロにされながらも反省のかけらもない言葉を放つ幸司にその場にいたみんなが呆れてしまった。
「お前の場合、本能に忠実すぎて全然スマートじゃないんだよ」
慎也はそう言うと幸司の額にデコピンをした。


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