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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-26

千晶と香澄が話しをしていた頃、圭介は屋上の片隅で智香に愚痴を零していた。
「ホントにどうしたもんだかなぁ。ったく、奈津ねぇと朱鷺塚にはまいったよなぁ…」
「でも、明日逃げたら奈津子お姉ちゃんからひどいことされるんでしょ。お母さんも楽しみにしてたからガンバってね、お兄ちゃん」
智香はニッコリと笑って無情な言葉を圭介に投げかけたのだった。
「智香、お前ってばたまにさらっとひどいことを言うよな。兄を労る気持ちというものはないのかね?」
「えーっ、智香はお兄ちゃんのこといつもちゃんと労ってるよぉ。それともお兄ちゃんってば甘えんぼさんなのかな?」
智香が楽しそうにからかう仕種を見せると圭介は苦笑いしながらやれやれといった仕種で智香の頭をグリグリと撫で回したのだった。
「ちょっ、お兄ちゃんやめてよ、髪がクシャクシャになっちゃうよ」
「なに、可愛い妹を思ってのことだ。遠慮するなよ」
圭介は嫌がる智香の抗議の声を気にすることなく終始笑顔であった。
その後、乱暴に頭を撫でられまくったことが気に入らなかったのか智香は頬を膨らませ拗ねてしまい、圭介は平謝りをした後に購買でジュースを奢るハメになってしまった。
結局のところ智香に愚痴を言ってもなんの解決にもならないことを圭介はわかっていた。
それでも愚痴を言ったことで少しだけ気分が楽になりちょっとは前向きに物事を考えられるようになったのか、ほんの少ーしだけケイとして舞台に立ってもいいかなと一瞬だけ思ったのだ。
そんな思いで教室に戻ってきた圭介をいきなり腕を掴み再び廊下へ引っ張り出したのは香織だった。
「相沢、これから買い出しに行くから荷物持ちよろしく!」
「はぁ!? いきなりなんだよ朱鷺塚。訳わかんねーよ」
「訳わかんなくてもOK! とりあえず相沢は何も考えずにあたしが買ったものを持ってくれればいいから!」
香織は圭介にそう言い切ると掴んだ腕を更に引っ張りズンズンと廊下を歩きだした。
 
「よしっ、買い物はこれで終了! 相沢、荷物持ちお疲れさま。あそこで少し休んで行こっか」
笑顔の香織は両手に大量の荷物を抱えた圭介に目の前にあるファーストフード店を指さすと圭介の意見を聞かずに店内に入って行き圭介はそんな香織を追いかけた。
「…それにしても何で俺なんだ? 荷物持ちなら幸司でもよかっただろ」
「うーん、あいつじゃダメなのよ。何から何まで意見が食い違うからね。さすがのあたしも街中でケンカなんてしたくないし……」
圭介の向かいに座る香織は軽くため息をつくと目の前のジュースのストローに口を付けた。
「まあ、確かに朱鷺塚と幸司の二人だったら確実にケンカになるだろうな」
苦笑いをしながら香織の意見に同意する圭介に香織は「でしょ!」と力強く言った。
「でも、相沢の場合は中嶋と違って人の意見をちゃんと最後まで聞いてくれるからあたしみたいな性格の人間には助かるのよ」
「それって朱鷺塚にとって俺は使いやすいってことなのか?」
目を細めて香織に問いかける圭介に慌てて「そ、そんなことないわよっ」と身を乗りだし弁解する香織はふと、圭介の顔をまじまじと見つめだした。
「やっぱり相沢ってケイの親戚なんだね。顔とかやっぱりよく似てるよ。智香の場合は可愛いって感じだからケイとはイメージが繋がらないんだけどね」
笑いながら言う香織の言葉に圭介はドキッとさせられたが、内心の動揺を悟られないように笑うしか出来なかった。
しかし、圭介としてはこの話題をあまり引っ張りたくないと思い話題をずらそうとした。


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