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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-24

その日の朝、2‐Aの教室で香織をはじめとするバンドの主要メンバーは竜二を囲み一際難しい顔をしていた。
なぜなら竜二の右手には未だに包帯が巻かれていたからである。
「予想はしてたけどやっぱり学園祭までに完治ってのは無理だったわね」
「まあ、どっかのマンガやドラマじゃないからそんなミラクルは起きるはずないよな」
香織と慎也がしょうがないって顔をすると竜二は気まずそうな表情になり素直に謝った。
「ま、そんなに気負うなよ。怪我をしたのはお前さんの責任だけど、みんなはそれを責めやしないって」
珍しく幸司がまともなことを言いながら竜二の肩を軽く叩いたのだ。
その光景を見たみんなは驚きと同時に『コイツ絶対なんか裏があるな』と内心思うのだった。
それもそのはず、幸司の表情はまともな言葉とはとても釣り合わないくらいの生暖かい笑顔だったのだ。
そんな幸司を見ながら圭介は苦い表情でこめかみを指で押さえ『また女絡みかよ』と思いながら思考がだだ漏れ状態の幸司をどうしてやろうと考えた。
しかし、そんな圭介の考えが伝播したのか圭介より先に行動したのは香織の鉄拳制裁だったのだ。
「中嶋! あんたねえ、そのキモい顔で一体何を企んでるのよ!」
「べ、別に何も企んでねーよ。竜二に恩を着せて千晶ちゃんを紹介してもらおーなんて…はっ、しまったぁ!!」
思わず出た本音にしまったといった顔をする幸司に対し、香織は怒りに肩を震わせどす黒いオーラを放つと何処からともなく取り出した竹刀で幸司を叩きのめした。
「それか! あんたの本音はそれなのかっ! 相変わらず成長しないっていうか、本当にそんなことしか頭にないのかあんたは!!」
爽やかなはずの朝の一時に幸司の断末魔が教室に響くのだった。
 
香織が明日の学園祭に影響が出ない程度に絶妙な力加減で正確無比な打撃を幸司に打ち込んでいる頃、千晶は2‐Cの教室で学園祭の準備で賑わう外の風景を窓から思いつめた顔で眺めていた。
千晶がそんな顔をして途方に暮れている理由は学園祭の出演メンバーに選ばれたことと、そのことを竜二に条件反射とはいえ隠してしまったことだった。
このことを隠しても明日になればすぐにバレてしまうのは明白なことなので、それが千晶の気持ちをより沈ませていたのだった。
校庭で明日のライブに使うステージのセッティングをしている実行委員を見て千晶はため息をついたのだった。
「榎本さん、おはよう。ため息なんてついてどうしたの?」
いきなり背後から声をかけてきた美弥に驚いた千晶は小さく悲鳴を上げつつもすぐに笑顔になり取り繕うのだった。
「まあ、何があったか知らないけど、明日は私と一緒にステージに上がるんだからさっきみたいな暗い顔してちゃダメよ」
美弥は笑顔で千晶にそう言うとスタスタと自分の席に歩いていった。
藤崎美弥というタレントは計算高そうな態度が理由で女性受けは確かに悪いが、自分のクラスメイトの女子だけに関しては美弥なりに大事にしているのだった。
ただ、人から見るとそう見えないのが彼女の難点であり損をしてるところでもある。
 
各々が学園祭に向けて準備をしている中、校庭ではライブ用の舞台の設営が学園祭実行委員長である広瀬安奈の指揮によって行われていた。
「うふふ…さて、ここはボクが直々に指揮してるんだから半端なことはしないからね」
一部の実行委員と有志によって設営されている舞台を腕を組み仁王立ちで見つめる安奈の顔は嬉しさを隠し切れないといった感じであった。

「結構でかいね〜」
設営されていくステージを教室から見下ろすは香織。
窓から両手をぶらりと垂らしテキパキ進められる作業に感心していた。
「なんか校内も飾られてきて…いよいよって感じだよなぁ」
香織の後ろから腕まくりをした幸司がステージを見下ろす。
圭介も隣の窓を開けて下をみた。


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