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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-23

「圭介、すまねーな。榎本って男に免疫がないせいか幸司みたいなペースの奴にはてんでダメなんだ」
すっかり萎縮してしまっている千晶に代わって竜二が圭介に礼を言うと千晶は恐る恐る圭介を見てか細い声で圭介に礼を言った。
圭介はそんな千晶にケイを演じている時に培った笑顔で微笑みながら「気にしなくてもいいよ」と一言だけ伝えた。
「ほんじゃ、こいつは俺が引っ張って行くから竜二は彼女のフォローを頼むよ。あと、練習ちゃんと行くんだぞ。サボると朱鷺塚のやつ後で怖いからな」
圭介はそう言うと竜二と千晶を残してまだ倒れている幸司の襟を掴むとズルズルと引っ張って去っていったのだった。
「東谷くん、ごめんね。友達に気を遣わせちゃったみたいで…」
「まあ、俺が言うのもなんだけど気にするなって。逆に幸司が迷惑をかけてすまなかったな」
千晶が恥ずかしそうに竜二に謝るが当の竜二は別段気にする様子もなかった。
この竜二という少年、男女問わずにフランクな態度で接することが出来るのが美徳といえば美徳なのだが、如何せん色恋沙汰に疎いが故のフランクさなので彼に好意を抱いている千晶にとって竜二の態度は始末の悪いものだったのだ。
「手…本当に大丈夫?」
千晶は覗き込むように竜二の包帯グルグル巻きの手を見た。
首を傾げて見たせいか眼鏡がほんの少しズレ、千晶はもたつきながら両手で直した。
「うわ…榎本のその動き未だ健在か」
眼鏡の縁を押さえる千晶を見て、竜二は懐かしそうに笑った。
その笑顔に千晶も表情がゆるむ。
「本当は心配してたの。藤崎さんって子がいるじゃない? うちのクラスに。あの子が文化祭のために躍起になってるから…恐いこと起きるんじゃないかって」
「俺のドジでしてやったりなわけだ、その子」
苦笑いして竜二は頬を掻いた。
竜二の言葉に千晶は慌てて付け足す。
「あ、でも、別に悪い子じゃないの。ただ一生懸命すぎるというか、他が見えなくなりがちというか…」
しどろもどろして挙げ句には自分の言葉に混乱し始めた千晶を見て、竜二はまたもや笑顔を見せ「わかったわかった」と言いながら、子供をあやすように千晶の頭をポンポン叩いた。
背がさほど変わらないため少々辛そうな姿勢ではあったが、千晶は竜二と喋れた事に満足気な表情を浮かべていた。
「で、榎本は何すんだ? まぁ昔っから人前苦手みたいだったからな…裏方か?」
竜二の言葉に、千晶は肩をぴくりと動かし明らかに動揺した動きを見せた。
「あ…も、もちろんだよ! 私なんかがステージに上がるなんて…無理無理」
千晶は両手を胸の前でブンブン振って否定的な態度をとった。
明らかに焦った様子だったが、何か言いたくないんだろう…と竜二は思い敢えて掘り下げなかった。

実は2−C、藤崎美弥を中心に学園祭にかなり熱を入れており、クラスの話し合いでバンドメンバーを決める際クラス内でオーディションを開いていた。
もちろんHRの時間にこっそり行われたのだが皆真剣だった。
審査員はもちろん藤崎美弥。
事務所の人間を引きつれてかなり本格的に且つ厳しい目線で2−Cの生徒全員を審査していった。
本気でやるみんなに後押しされ、あまりバンドに興味のなかった千晶もこの時ばかりは気合いを入れて臨んだ…――というより気合いを入れて臨まざるをえない空気だったのだ。
そこでは歌唱力・スタイルなどを審査され見事千晶は選ばれてしまったのだ。
まさか選ばれるとは思っていなかった千晶は人生初の大役に多大なる不安と少々の期待を感じていた。
そんな感じでお互いのクラスは秘密裏にメンバー選出や練習を重ね香織や美弥、それぞれのクラスメイトの様々な思惑を抱えとうとう学園祭前日を迎えたのだった。


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