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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-16

「ただいまぁ〜」
遅れて智香が帰ってきた。
「お帰り智香ちゃん。ねぇ、智香ちゃん達のクラスは何するの?」
母さんはやんわりとした声で制服のリボンを外す智香に訊ねた。
「ん? うちのクラス? なんか大ホール貸し切っておばけ屋敷するんだって。ママ来てね♪ …お兄ちゃん達は?」
事態を説明すると智香はかなり驚いて俺を慰めるように肩を叩いてくれた。

日曜日はあっという間にきやがった。
しかも俺は律儀に集合時間5分前に来ていた。
連中はゆるいから5分前行動なんてするわけがない。逆に5分は遅れて来るのが普通だろう。
駅前のベンチに座りみんなを待つ。
日焼けは奈津子から禁止されていて、日焼け止めを兼ねたファンデーションを朝塗りたくられた。
香織には一度見られているが知った仲の奴にミニスカートを履いた姿を見せるのは抵抗があったので、それだけは断固として拒否しジーパンを履いてきたケイだった。
日焼けと念のためにキャップをかぶる。
こんな格好でみんな気付くのか?
『人気モデルのプライベート』風のラフな格好で、俺はみんなを探すため首をキョロキョロと振った。
すると同じように首をふる奴を見つけた…――幸司だ。
まさかあいつが一番にくるとは…。
俺はうろうろする幸司をしばらく遠めから観察していた。
どうやら幸司は自分が一番乗りだと思い近くの縁石に腰を下ろした。
するとすぐ後ろに厳ついメルセデスが停まった。
驚く幸司をよそに、颯爽と降りてきたのは朱鷺塚香織お嬢。
運転手に手振りで合図を送ると車は去っていき、幸司と何やら話を始めた。
また口喧嘩してんだろうなぁ…。
いそいそと近づいて、聞き耳を立ててみる。

「…性格とかいいの?」
「いいに決まってるじゃない!! この前もさ、何にもしてないけど「手伝ってくれてありがとね」みたいな感じでお礼言ってくれたんだから!」
香織は何やらケイの物真似をして幸司にケイの良さを伝えていた。
「律儀な子やねぇ〜」
出てもいない涙を拭う真似をしてうんうんと頷いている幸司。
「それはもう狙うしかないな!!」
俺は吹き出した。
そして脱力。
そうきたかぁ〜と苦笑いして四つん這いに倒れこむ。
考えてみればケイは女。
ファンが同性だけのはずがない。
でも…幸司に告られたら殴り返すな…100%間違いなく…。

ケイが地面に手をつき空笑いしていると、香織の怒った声が聞こえてきた。
「やめてよねっ! あんたみたいな阿呆に付きまとわれたらケイ仕事できないじゃない!! せっかく学園祭の出演にOKもらったのに問題起こしたらただじゃおかないからね!」
香織は握りこぶしを振り上げた。
幸司はわかったと言いながらも何とも言えぬ笑みを浮かべている。
…今更だけど…俺って不幸だよな。
女装させられて、人前に出されて、親友に惚れられて…自分の運の悪さを責めた。
どれもこれも『あいつ』のせいだろうけど…。
俺は頭の中にぱっと悪魔耳の生えた奈津ねぇを思い浮べる。
いつまでもうなだれていても仕方がない…と、俺は二人の所に手を振りながら近づいていった。


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