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子羊の悩ましい日々
【ファンタジー 官能小説】

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『子羊の悩ましい日々 〜メイデンバタフライ編〜』-1

「……………………」
 ロイは、昨日狂宴が行われた部屋の扉の前に立っていた。何度か扉に手を伸ばすが、そのたびにためらうように手をひっこめる。
「はあ……どうしよう……」
 どうしようも何も、これが仕事なのだから扉をくぐらざるをえない。しかし、その一歩がどうしても踏み出せない。そうこうしていると、
 ギギギギギ……
 扉は自然に開かれていった。
「……入れってこと……なんだろうなあ、やっぱり……」
 ロイは覚悟を決めると、顔を伏せ気味に中に入る。
 ヴン……
 一瞬身体に奇妙な浮遊感覚を感じるが、それも一瞬のこと。そんなことを気にする余裕などない事態が起こっている。
「……ええと……」
 目の前に広がる光景に戸惑いの声を上げるロイ。
 そこは森であった。木々が生い茂り、熱く湿った空気が肌にまとわりつく。
「……ここ、神殿の地下室だよね……?」
 後ろを向くと、入ってきたはずの扉がない。
「何なの一体……」
 仕方なしに当てもなく歩き始める。地面は少しぬかるんでいる上に、生い茂る陰性植物や、はりめぐらされている高木の根が邪魔をして思うように進めないが、ほどなくして少し開けた場所にたどり着く。
「ふう……昨日はこんなに広くなかったよね、地下室……」
 そこまで言って、木々の間から太陽が見えていることに気づく。おそらく、地下室ではない別の場所にいるのだろうと結論づける。
「転移の魔法か……。このまま帰ることできなかったらどうしよう……?」
 心細く呟いたとき、風に乗ってキラキラと光る粉が運ばれてきていることに気づいた。太陽の光を浴びて虹色に輝くそれは幻想的で、ロイはまるで乙女のようにうっとりとした表情で見続ける。
 見ているうちに心の底までとろけてきそうになり、いつしか地面にぺたんと座り込んでいた。
「あ……あれ……?」
 何かおかしいと頭の片隅で思ったときには時すでに遅し。身体の自由がきかなくなっている。
「うふふふ……」
「あははは……」
「くすくす……」
 複数の少女の笑い声がどこからか響いてくる。力を振り絞ってその方向に首を向けると、綺麗な模様の羽を持つ蝶が3匹舞っていて、こちらにゆっくりと近づいてきている。先ほどの光る粉は、その蝶たちの鱗粉だったのだ。
「やったあ、大成功!」
 ロイのすぐ近くに3匹の蝶は舞い降りた。
 もちろん、普通の蝶とは違う。
 頭、胸、腹という部分に別れるはずの胴体は、大きさも含めて人間の少女のそれとほぼ変わらない。全裸の15,6歳の美少女に蝶の羽と触角をつけただけのようにも見える。
 1匹目、いや、1人目は青いボブカットの髪と釣り目が印象的な青く光り輝く羽を持つ蝶。2人目は赤いポニーテールと人懐っこい目つきが印象的なオレンジ色の羽を持つ蝶。そして3人目は緑のショートカットと丸い瞳が印象的な深緑色の羽を持つ蝶だ。3人目はやや幼く13歳ぐらいに見える。
「君たちは……?」
 羽と触角以外は全裸の美少女たちを前に、ロイは目をそらしながら尋ねる。
身体の動きはまだ鈍いままだが、意識と口調はしっかりしている。
「私たちはメイデンバタフライ」
 一番大人びた雰囲気の青い髪をした蝶少女が答える。
「キミが子羊くんなんだよね? あたしたちの練習台になってくれる」
 好奇心が強いと思われるポニーテールの蝶少女は、ロイをしきりに観察しながら言う。
「あの……よろしくお願いします……なの……」
 一番年下に見える蝶少女は頬を染めながらか細い声で言う。
「こちらこそ……よろしくお願いします……」
 半ば投げやりにロイは言った。
「あの……身体がうまく動かないんだけど……」
「それは私たちの鱗粉を吸ったから。大丈夫、さっき流したのは少し身体が痺れるだけだから」
「えっと……風を操って、対象が鱗粉を吸うように調節するんです……」
「人間とこ、こ、こ、交尾をするときの最初の手順なわけ」
 ポニーテールの少女は少し恥ずかしそうにどもりながら言った。
「ここまではうまくいったようね」
 突然新しい声が聞こえてきた。声の主はロングの黒髪と黒い羽を持つメイデ
ンバタフライだ。ただし、先ほどの3人よりも年上で、人間でいうと20代前半ぐらいだ。ボディーラインも成熟した女性を感じさせる。


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