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夢の雫
【ファンタジー 恋愛小説】

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夢の雫-3

「神山裕介さん、ですね?」
神柳は神山に話しかけた。
無論、神山は神柳の事を知らない。
それに彼は見知らぬ男に話しかけられる義理もない。
「はい」
だが、彼はあえて正直に答えた。
日常から非日常へ、彼が望む世界がそこにある気がしたのだ。
「では、犠牲になってもらいます」
「へ?」
それは予想だにしない言葉だった。
犠牲?神山には何を言っているのか、理解できなかった。何のために?なぜ?
そんな神山をよそに神柳は懐に潜り込むと、神山の胸へと手を当てた。
「あなたの犠牲、無駄にはしません」
神山が気付いた時には宙に舞っていた。
そして

ドガアアアア!

何かにぶつかり、骨の砕ける音がそれに続く。その頃にはもう神山の意識は飛んでいた。
「…浄様、ズレましたね」
「最後の最後でヘマをしました。ですが、大丈夫でしょう。警察には何が起きたか、理解できません」
瑞穂は淡々と破壊された壁に触り、破壊の具合を確かめる。
「しかしどちらにせよ壁を破壊したのは問題でしょう」
「そうですね。早く引き揚げるに越したことはありませんね」
瑞穂は壁から手を離し、神山の首元に手を当てる。
「…浄様、生きています」
神柳はその言葉に少し驚いたが、とは言っても、水たまりが出来るほどの出血だ。
神山が助かる可能性はほぼなかった。
「その怪我では時を待たずして死ぬでしょう。瑞穂、苦しませる必要はありません、楽にさせなさい」
「はい」
瑞穂は返事をし、小刀を取り出し神山の胸に突き刺そうとした。
「なっ!」
その手を屈強な男が止めた。重田だ。
「は、離してください!」
必死に瑞穂は手を離そうとするが、無駄な抵抗であった。
掴まれた手は文字通りビクともせず、それどころか強く握られ過ぎて痺れるほどだった。
「離して!」
「何をした」
「離して!離して!」
「何をしたか聞いてるんだ」
凄みの利いた声で、重田は言った。
その姿は怒りに震えていた。
「離してやってください。その子は関係ありません」
「あんたがやったのか?」
瑞穂の手は離さず、重田は言った。
「はい、私がやりました。見ていたのでしょう?」
「…けっ」
突き飛ばすように重田は瑞穂の手を離した。
その瞬間、瑞穂の目が獣のような血に飢えた目に変わった。
「瑞穂、止めなさい」
「…はい」
瑞穂はキッと重田を睨み付けると、目を元に戻した。
「それで何の用です?」
「何の用か。わかってるんだろ?」
「ええ。引いてはくれませんか?」
「生憎、ダチをやられて我慢できるほど人間出来てないんでな!」
そう言って、重田はちょうど捨てられていた鉄パイプを拾い。
それを手に殴りかかった。重田の鋭い一閃が神柳に直撃する。


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