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お手紙
【片思い 恋愛小説】

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お手紙A-6

「…ありがとうね。」
沈黙を破って松田君が呟いた。
「手紙とかもらうの初めてだったし、渡すのだってめちゃくちゃ勇気必要だったと思うけど、嬉しかった」とつとつと紡がれる松田君の言葉。(…社交辞令?)そんな疑いの念が心をよぎり、私は自分に嫌悪感を抱いた。
どこまで私は疑うの?分からないこと気に病んだってしょうがないじゃない。

信じるんだ、松田君を。

「あの、迷惑じゃなかったら…」
(私と付き合って下さい!)「ん?」
かすかに小首をかしげる彼。駄目だ、言葉にならない。 でも…!!今日で終わりになんかしたくない!
「また会ってくれますか!」「え?」
「ていうか、友達になって下さい!!」
自分でも知らず知らずに言ってしまった。
「…普通に、いいよ。」
松田君は笑う。
「てか、今更ですか。」
私は拍子抜けした。それと同時に胸の奥がほっこり暖かくなるのを感じた。
「い、一応本人の意志確認を行おうと思いまして…」 「ああ〜、まあこんなご時世ですからね。」
「やっぱり仏様のお友達になるには、それなりの了解を得ないと…」
一拍置いて、松田君が笑う。私もつられて笑ってしまった。壁が10センチくらい薄くなったのを感じた。

「今日はわざわざありがとう。お話できて楽しかったです。」
「俺も楽しかったです。ありがとう。」
私と松田君は、会計を済ませ(眼鏡婆が嫌らしく笑っていた)店の外に出た。
夕焼け一色だった空はもう藍色。風も心なしか冷たい。
「…寒。」
松田君が肩を狭めてふーっと息を吐く。その息が白く雲のように私の前を通過した。
「…じゃあ、今日はこれで。」
「…うん。」
「バイバイ。」
顔の前で手を振る松田君。「バイバイ。」
振り返す私。松田君は微笑むと鞄を肩にかけ直し、行ってしまった。私はその後ろ姿を見送った。

今まで私は、見ているだけだった。きれいな後ろ姿を。でも今日、私はすごく変われた。松田君のおかげだよ。

「…ありがとう。」

私は遠ざかっていく背中に向かってそっと言った。

そして小声で一言付け加えた。

「大好きです。」


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