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空の唄〜U
【ファンタジー その他小説】

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空の唄〜U、月下の妖精〜-2

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これは、“ミルワート”という世界の話である。
余す所なく人々の笑い絶えぬこの世界には国も、王もなく、それぞれの町で独自の自治を育んでいた。町々間の交易もほどよく行われ、争いはない。まさに天上の楽園のようであった。

だが、ある年、予想もせぬ出来事が世界を覆うことになる。

――魔獣の出現。
どこからなぜ現れたのかは定かではないが、その魔獣と呼ばれる獣のごとき魔物は時には水を流し、時には火を放ち、時には雷鳴を轟かせた。町々は困り果て、魔獣討伐のため武器をとった。これにより、今まで独自の自治を育んでいた人々が手を取り合うようになったのだ。
『これは神による結束への御導きなのだ』という噂が立ち始めたが、それは瞬く間にある事件により消え失せられた。

その事件とは、魔獣を操りし者の出現である。
ある町で魔獣を自在に操る者が確認されたのだ。その者は横行する魔獣を捕らえた訳でもなく、手懐けた訳でもない。目撃者によると、その者の体から解き放たれたという。
世界に波紋が広がった。この者個人のためではない。そのような者が幾人も世界中で発見された故だ。
『新しき人種により我ら古き人種は滅ぼされる。これは神の与えた罰だ』という唱えは確実に人々の間に恐怖を植え付けた。恐怖は新しき人種を遠ざけ、差別される対象とした。

かくして、この古き人種(後にソルジャー)と新しき人種(後にストレンサー)にはあまりにも深い溝が出来たのである。

やがてその溝は、暴挙と化した。二種は互いの存続のためぶつかりあい、殺しあった。数で勝る古き人種と、力で勝る新しき人種。両者譲らぬ攻防戦は季節をとわず毎日続いたという。

そうして二百年が経とうという頃、ある一団により全ては収束することになる。
彼らはどちらに付く訳でもない中立の立場から戦を押し止どめた。彼らの有する技術は他に類を見ない優れた物であり、混迷の大地を瞬く間に静まらせてみせたのだ。

こうして、二つの人種は凪のように穏やかとなり、共存の道を歩むことになる。

これこそミルワート第二紀の始まりである。
そしてその英雄である一団はその栄誉のもとに“メシア”という組織を樹立。それぞれの自治ある町々の頂点に君臨することになり、その権力はさらに三世紀が経とうとする今現在にも繋がっている。


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