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ロッカーの中の秘密の恋
【教師 官能小説】

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関係は化学反応をおこす。-6

服を全て身に着けて、ようやく落ち着いた。裸で居ると横から手が伸びる。私はそんないたずらな手にもてあそばれてはやらない。
「セックスが終わると冷たいってどうなんですか。」
一昔前の女のぐちのようだ。別に冷たくしているつもりはないけれど、あまりにも最中に倒錯的なことをするから我に帰ると恥ずかしくて目も当てられないのだ。体に入れられた試験管を洗う時やこぼした床を拭くときなんかに。
彼はドアの外の買い物袋を取り込み、中身を確認した。「あ、あいつら、シャーペンの芯も買ってこいって言ったのに。」この人だって、研究のことになるとやたらムキになって、その間は私のことなんかまるで忘れているくせに。
「ねぇ、にゃんこはさ、普段ここに居ない時は何してる?」買い物袋をごそごそやりながら言う。
「どうしてですか?」
「いや、単純に。よそのことを見せないから、君は。」見せないって言われても、見せるようなこともさしあたっては思い当たらない。
「僕だって、何も思わないわけじゃない。何してるのかとか、どんな友達が居るのかとか、そういうこと何も知らないで、不安がないわけじゃない。知りたいって思わないわけない。」
買い物袋の中身は全てテーブルに出して、彼はそれをいたずらにならべる。
「夏目からはぜったい踏み込んでこないの、不満に思わないわけない。」私の手はとっくに止まっていた。かさかさ言うビニールの袋をくしゃとまるめて、ゴミバコに棄てるのをただ見ていた。
「夏目?」
「結婚してるくせに。」
彼は結婚している。うかつに好きだとか言えない相手と関係してしまったことに後悔だって少しはある。私だって彼が大学に居ないところで何をしているのか知らない。それを知ろうとするべきなのかどうかすら分からない。私はずっと彼が好きだという気持ちを認めることがためらわしかった。そして、今は少なからず彼も私に興味があると知っている。それでも彼に何かこれ以上の関係を求めることがありえるのか分からなかった。
「うん。してる。」
のうのうと認めるあたり図々しい。彼は視線を壁のほうへ逃がしていた。
「でも、ぼくの奥さんはもうずっと不在です。」
「え?」
「3年前に逃げられた。そのまま。」
私は開いた口がふさがらなかった。この男どこまでだらしないんだろう。
「にゃんこはそういうとこマジメだな。」彼は椅子ごと向き直って私と目を合わせた。ぼさぼさの髪をかきあげて苦笑いしている。
いや、何をおっしゃる。マジメって。嫁に逃げられて、三年も放置しておくのはマジメだの不真面目だのという以前の問題だと私は思っているんだけど、それは間違っているだろうか。
「にゃんこの選択肢は二つだ。僕の女になるのか、ならないのか。」
半ば放心しながらも彼から目が離せなかった。緩んだのは一緒にとまっていた息の苦しさに気がついて深く息を吐いた時。
小さく頷いて言う。
「なります、先生の女に。」
ふう、と彼も息を吐く。彼も緊張を緩めたのだ。きみ、二択ならできるんじゃない、といって頭にぽんぽんと手をやり、額にキスをされる。
「僕、君が好きだっていったけ?」
「初耳ですけど。」
「あ、でも君が好きなのは僕の体なんでしょ。やっぱり体目当てだったんだな、君って人は。」
そう言って、汚い白衣の内側に絡めとられるのも、もはや悪い気はしない。毒されている自分に思わず苦笑いする。


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