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しにがみハート
【コメディ 恋愛小説】

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しにがみハート#8-2

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「う…うぅ…ぐすっ…うぅ…」
「泣きすぎだろ絢芽…」
「キ…キャサリンさえいなければ…っ…ジャックは幸せに生きれたのに…」
 失恋映画を見終え、さっきから涙をだばだば流している絢芽。
 確かに切なかったけど…泣くぐらいではなかったけどな。
「……ぁぁー、孝紀ざぁーん…」
「わー! みんなの前で抱き着くんじゃねー!」
「ほら! 姫雪ちゃん抱き着いてー♪」
「みんなの前ではちょっと…」
 失恋映画を見たのに異様なハイテンションを見せる俺達に、他の客の視線が突き刺さる。
「孝紀さんは離れないでぇぇぇー…」
 泣きながら俺に抱き着く絢芽。
「わーかったから!! 外に出よう!! ここに居たくないんだ俺は!!」
「ラブラブじゃんかー♪」
「うっさいわ!!」


■■■


「孝紀さん大好きですからぁ」
そう言いながら手元にあるパフェを掬う絢芽。
「映画館の前に店があってよかったな。孝紀」
「このサンデー美味しいですね…!」
さらに2人もデザートを食べている。
「………なんで払うのが俺なんだ」
「孝紀さん大好きですからぁ」
「それはさっき聞いたな」
「キ…キャサリンが…っ…」
「それ関係ないな」
 美味しそうにパフェとサンデーを食べる3人の前に、俺は腕を組んで立った。
「絢芽は彼女だから良いとして…」
俺は知らない顔をして美味しそうにパフェを食べている理人を睨んだ。
「お…、おいしいなぁ…」
「理人」
「は、はいっ!!」
「なんで絢芽はともかくお前達に奢らなければいけないんだ?」
もちろん、姫雪の分まで俺が奢った。
「…な、成り行きってヤツ…?」
「ほぅ……成り行き。か…実に便利な言葉ではないか? ん?」
「そ、そうっすね…」
 怯えながらスプーンをカタカタと震わしている理人。
「理人、ちょっと来い」
「は…はぃっ…」
隣に理人を座らせる。
「財布を見せてくれ。いや、見せろ」
「それ…それだけは…」
「見 せ ろ」
「はいっ…」
強奪した理人の財布の中身を見ると、漱石が4人。…実に中学生らしい財布だ。
「…漱石を一人引き取ろうか」
「それだけはっ!! ゲームが買えなくなるんだ!!」
「人身売買はイヤか」
「札だ!!」
「どうする? 姫雪ちゃんに聞いてみるか」
俺は、姫雪に同じ質問をした。
帰ってくる答えは当然。
「彼女としては彼氏に奢ってもらいたいな…と」
「はい一人引き取り決定」
「あ…あぁ…!! バカな…そんなバカな…」
漱石が一人減った財布を見て呆然としている理人。
「まぁ世の中、そんなもんだ」
「孝紀め…」
「パフェおかわりするか」
「いや、スイマセン!! 俺が悪かった!!」
「わかればいいんだ。わかれば」
なんか初めて人の上に立った気分だ。
いつもやられてる立場だしな。少しはやり返さないと。


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