投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

■LOVE PHANTOM ■
【その他 その他小説】

■LOVE PHANTOM ■の最初へ ■LOVE PHANTOM ■ 13 ■LOVE PHANTOM ■ 15 ■LOVE PHANTOM ■の最後へ

■LOVE PHANTOM■五章■-1

うっすらと開いている靜里の目には、月明かりに照らされる叶の姿があった。なぜ、ここにいるのかは分からない。しかし、彼は自分を助けるために来てくれた、ということは分かっていた。何か、叶に向かって声を出したかったが、長時間寒さと恐怖にあてられたため為、思うように唇が動かない。
「何だお前。」
靜里の上に乗りながら小柄な男は言った。
「彼女から離れろ。・・・で、なければ・・。」
刃物のような目付きで叶は言う。小柄な男は一瞬、息を飲むと叶に言った。
「ふざけるな!何だよこいつは、お前の女か?」
「・・・・いいや。」
少し、間を開けて叶は答えた。
靜里はそっと瞳を綴じ、体の力を抜いた。もう、抵抗する必要はないと判断したからである。二対一、と叶の方が不利なはずなのに、彼は確実に自分を救ってくれる、という安心感が彼女の中で生まれていた。それがどうしてなのかは分からない。
しかし、叶を見ていると、不思議にそう思えてくるのだ。
「いつまで靜里に乗っているつもりだ。」
叶の挑発的な態度に、男はのった。靜里からゆっくりと手を放すと、その場に立ち上がり、じっと叶を睨みつけている。その横にいた大男も、同じようにして立ち上がり、叶を睨んだ。それを見た叶は、一度鼻をフンと鳴らすと、右腕を前につき出し、
「片手で十分だ。来いよ・・・。」
男たちを小馬鹿にしながら、言った。
「貴様ぁ!」
先に攻撃を仕掛けてきたのは小柄な男だった。獣のような咆哮を上げ、叶に突っ込んで行く。叶は突進してくる男を睨んだまま動かない。共に射程距離内に入った。
男の拳は、叶の顔面一直線に繰り出された、が、叶は、相手から視線をそらす事なく、身を屈め、彼の攻撃をかいくぐり、男の顎めがけて自分の拳を突き上げた。男の体は、「ゴキッ」という鈍い音がしたかと思うと、後ろに反り返り、地面へと叩きつけられた。男は、釣り上げられた魚のように、体をよじり、細くうめき声をあげた。
口のあたりを押さえている両手の、指の間からはだらだらと血が流れていく。
顎の骨が砕けたか、もしくは舌をかみ切ってしまったのかもしれない。
「俺は今、機嫌が悪いんだよ。」
叶は、うずくまる男を見下ろしながら言った。
「次は・・・お前か。」
叶は素早く後ろを向いた。大男は、叶に覆いかぶさるようにして飛びついてくる。
「まるで熊だな。」
迫りくる巨体を見ながら叶はそう呟き、再び身を屈め、大男のみぞおちに拳を埋めた。瞬間、大男は体をくの字に曲げ、出来なくなった呼吸を必死に取り戻そうとする。叶は、その時を決して見逃したりはしない。より自分の身を屈め、大男の大きな顎めがけて拳を突き上げた。さっきと同じ、鈍い音が静まり返る空間に響き渡り、男の顔は真上を向いたまま、戻らない。その巨体は両足を地につき前へぐらりと崩れ、叶は一歩後ろへ下がると、その体が崩れていくのをただ冷めた瞳に映していた。
そのまま男は動かなくなった。
叶は「ふぅ」と小さくため息をつくと、靜里の方へと目をやった。靜里はゆっくりと上体を起こし、叶の方を見て少し笑った。頬や服は泥だらけになり、髪の毛もくしゃくしゃに乱れている。
「大丈夫ではなさそうだが、怪我はないだろ?」
靜里に歩みより叶が言う。
「うん・・・ありがと」
そう言いながら靜里はよろける足でゆっくりと立ち上がった。
「立てるのか?」
叶は心配そうに靜里を見ている。
「平気だよ・・・とっ。」
靜里の膝は、さっきまでの恐怖と、抵抗に疲れ果てていた。なので、自分の体を支え切れずに、あくまで自然体で再び地面へと倒れ込もうとした。
それを片手で支えたのは叶だった。靜里の小さな体は、まるでスローモーションの映像のように叶の両腕に収められた。
叶の暖かな温もりが、靜里の冷めきった体にも伝わってくるのが分かる。靜里はゆっくりと瞳を綴じて、その温もりに身をまかせた。
男の腕の中が、こんなにも安心できる世界だとは靜里は知らなかった。何にも勝る両腕だ。と、靜里は思った。この両腕の中にいる限り、自分はどんなことからも守られるという安心感が彼女を覆う。


■LOVE PHANTOM ■の最初へ ■LOVE PHANTOM ■ 13 ■LOVE PHANTOM ■ 15 ■LOVE PHANTOM ■の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前