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H.S.D
【学園物 恋愛小説】

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H.S.D*11*-3

…三…二…一…。


授業終了のチャイムが鳴った。
矢上がおもむろにカバンを掴んだ。
「オレ、今日もバイトだから先帰るね。来週からならちゃんと残れるから」
矢上は早口であたしにそう告げた。
「あ…うん、分かった。バイバイ」
「バイバイ」
矢上はあたしの前を通り過ぎ、何人かに手を合わせて「ごめんね」と謝っていた。そして扉を開け、小走りで教室を出ていった。


あたしは暫らくボーッと立ち尽くしていた。
何だろう、何か腑に落ちない。好美も樋口も納得したようだけど、あたしはあんなので納得出来ない。
無償に不安で仕方がない。矢上が心配で気が気じゃない。
こんなことしてる場合じゃない。

あたしは、今、何をしたい?

…そんなの今の気持ちのまま動けばいい、ただそれだけ。
「好美、ごめん…」
「樋口が三人いたらねぇ季節が夏のまま変わらねぇわよ!…な、ん?音羽、何謝ってんの」
あたしは机の脇に掛けてあるカバンを引っ掴んだ。
「ごめん、やっぱりあたしも帰る…」
あたしの言葉を聞いて、好美は「はぁ?実行委員のくせに…」と言い掛けたが、あたしの心情を悟ったのか
「…オッケー。行きな」
と笑った。
「ありがと」
あたしは好美にそう告げると、事態を理解していない樋口を尻目に教室を飛び出した。


誰もいない廊下にパタパタとあたしの足音だけが響く。
あたしは、だんだん教室の騒つきが小さくなっていくのを何となく感じていた。


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