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ふたり
【幼馴染 恋愛小説】

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ふたり【新春】〜波乱を招く入学式!?〜-3

遊輝はクラスで一番背が低い。つまり列の一番前に位置している。
そして新入生は遊輝の2―1クラスの目の前を通る。
さらに、並び方が男子は右で女子は左である。つまり、新入生の少女達の目に一番最後に触れる先輩……それは、遊輝ということになる。
そしてさらに、遊輝はあかねを探して、目の前を通るほとんどの少女達の顔をまじまじと見ている。


符合が一致した。


可憐な少女達は目が合った美形少年にことごとく心を奪われていったのである。
その証拠に、指定の座席についた少女達は何人もチラチラと後ろを振り返り、遊輝に熱い目線を送っている。
なにせ、遊輝も真剣な眼差しを送るもんだから、勘違いしてしまっても仕方のないことだろう。


…そうこうしているうちに、とうとうウワサの美少女のご入場である。
途端に拍手の音が小さくなり、代わりにザワつきが大きくなる。
中には立ち上がって指を差している生徒もいる。

遊輝もそれに気付き、彼らの視線が集中する新入生の列の後部に目をやる。


遠目に見てもわかる、他の女生徒をはるかに凌駕したあかねの美貌。 遊輝はその他大勢の男子生徒と同様に、あかねに釘付けになる。

あかねも他の新入生と同様にキョロキョロ周りを見回している。

そしてエリカを見付けると、笑顔で手を振った。

どよめく観衆……もとい生徒。
…こいつらは、あかねを本当のアイドルだと思ってるんじゃないか、とさえ感じられる。
『あかねちゃーん!』って誰かが叫んでもおかしくない雰囲気だ。


しかしこの体育館は、次の瞬間──ちょっとした静寂を迎えることになる。


あかねが遊輝を見付けた。目が合う。
だがあかねは、笑いかけるでもなく、目を逸らす。…かと思えば、また遊輝をチラチラと見る。

遊輝は不思議に思ったが、列が遊輝の近くまで進行した時、あかねは思わぬ行動に出た。

なんと列を外れ、遊輝の側に駆け寄ってきたのだ。

──静まりかえる観衆。
聞こえるのは、少しの拍手音のみ。
誰もがふたりを注目した。

あかねは急に静かになった周りを気にしながら、遊輝の耳元に小さな口を近付けた。


「あかね、制服似合ってる?」

あかねはそう囁くと、少し離れて自然なポーズをとる。

遊輝がうんうんと2回頷くと、あかねは嬉しそうにニッコリ笑って、列に戻っていった。


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