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■LOVE PHANTOM ■
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■LOVE PHANTOM■三章■-4

靜里は深くため息をつくと、箱の蓋を閉めた。ぱちっと音をたてると、箱は叶に向かって差し出され、叶はその箱へ視線を落とした。
「分からないって言うような顔ね。」
「・・・気に入らなかったのか。」
再び叶の瞳は靜里を見る。
「なぜ私がこれを貰わなければならないの?どうしてあなたはこれを買って来たの?出会ったばっかりで・・どうしてこんなこと。」
靜里は今にも泣き出しそうな声で、非難の言葉を吐き出した。それは、叶にたいして迷惑だと言っているのではない。ただ意味もなく、贈り物をしてほしくはなかった。それだけであった。
靜里は、ゆっくりと、何度も、首を振る。
「叶が私を探してくれたのは分かるよ。でもね、だからって貰う訳にはいかないの。」
「なぜだ俺はお前がほしいと言っていたから・・ただ欲しいものをあげたかったから。」 「もしも私があなたを愛して・・あなたが私を愛して・・そして恋人になって・・・あなたが私のために贈り物をしてくれるのなら、それはとても嬉しいし素直に受け取れるよ」 一筋、靜里の瞳から涙がこぼれた。
それはゆっくりとほほをつたい、そして靜里を離れる。
「俺はお前を愛している。」
叶は、目を細めると、そっと彼女のほほを流れ落ちようとする涙を拭ってやった。
熱かった。自分の肌が、不思議な熱で溶けてしまうほどに、靜里のそれは叶を刺激した。。
「昨日言ったはずよ、あなたの愛は愛じゃないって。私を愛しているのはあなたの中に流れる記憶でしょ。しかもそれはあなたのご先祖様の。」
「・・・・・。」
叶は初めてギクリとする感覚を覚えた。杭で胸を刺されたような、そんな感じによく似ている。
靜里はそっと叶の胸に手をおいた。
「あなたはあなたの愛する人を探して。叶の中に流れる記憶は、あなたのものじゃないでしょ。」
そう言うと靜里は、そっと叶の手に指輪の入った箱を握らせてやり、彼の目を見た。
「ごめんね、せっかく買ってくれたのに。」
返事はなかった。いや、出来なかったのだ。叶は、どうしていいのか分からずにその場に立ち尽くしている。
靜里は叶にぺこりと頭を下げると、彼に背を向けて走りだした。そのときの彼女の背中は妙に小さく見え、そしてそれは、悲しくも叶の目に映った。
「靜里!」
走り去って行く靜里を遠目に、幸子が叫んだ。
自分も彼女を追いかけようと、幸子は駆け足の態勢に入った、が、次の瞬間その足を止めて叶の方を振り向いて言った。
「よく分からないけどさ。あんた、すこし間違ってると思うよ。」
「・・・・。」
「靜里はきっとあんたに好かれたいんだよ。」
そう言うと幸子も叶のそばを後にした。
叶はその場から動こうはせず、じっと、さっきまで立っていた靜里の姿を思い出していた。彼女の言うことは訳の分からないことだらけだった。「欲しいもの」をあげたつもりが、逆に彼女を悲しませることになるとは、思っても見なかったのだ。
「俺はどうればいい?」
叶は靜里に贈るはずだった指輪の箱を、ぐっと握り締めると、呆然とした顔で空を見上げていた。


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