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<凄艶な刃>
【同性愛♂ 官能小説】

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<凄艶な刃>-1

 飼い慣らされた犬……
 そう言えば全ての説明がついてしまう。
 そんな関係に、俺はずっと終止符(ピリオド)を打てないでいた。
 特に弱みを握られている訳でも、逆らえない理由がある訳でもない。
 じゃ、何故?……
 判らないよ…
 だけど、その理由が判らないのは、きっと俺だけじゃない…きっと秀介だってそうなんだ…
 彼の放つ熱い鼓動を体内に受け入れる度に、何時も何処かでそんな気がしていた。

 だけど、そんな断ち切る事が出来ない曖昧な関係と気持ちとの別れは、いとも容易く訪れた。

―転校―

 たったその一言で、今までの俺と秀介の全てのことが無かったことになろうとしている。
 今日のこの瞬間をやり過ごせたなら、やっと終止符が打てる…
 望んだ通りの筈なのに……
 それなのに……―
 どうしても、この心臓の高鳴りを抑える事が出来ない。
 どうしても、笑えない……

「あ…ぁッ…ちょっ…やめろって…」
 人気のない一階の理科実験室…
 だからと言って、そこは鍵が閉まっている訳ではないし、窓の外は運動場へと続く道がある。
 暗幕の隙間から零れる傾いた陽射しは、教室の外を誰かが横切る度にチカリと途切れ、その度に高い笑い声や、ふざけ合う戯れ声が、俺の耳に飛び込んでくる。
 そんな風に外が穏やかであればあるほど、俺の周りの空気緊迫してくる。
 緊張と羞恥…
 俺は気が遠くなって意識を手放してしまいそうになる。
 下半身を露にして立ったまま、机に付いた両肘に顔を埋めた状態で、俺はただ背中に感じる秀介の体温に身を強張らせる。
「うっ…あぁ…ぁ…はぁっ…ハァ…ぁ…や、やめろって!」
「やめろ?…そう言う割には、コッチはその気になってんだから、全然説得力がないんだよ!」
 背後から伸びた秀介の手が俺の下肢へと伸びて、彼が『コッチ』と称したその屹立部分を握り締める。
 ジュッと滲み出た蜜が秀介の手を伝い潤滑液となって、その手の筒で上下に刺激されれば、ゾクゾクと電流が身体中を駆け巡り、俺は不自然に身を捩る。
 同時に薄いシャツの裾から忍び込んできたもう片方の手が胸の突起を探り当て、指先で弾くように触れられれば、身体は自然にピクリと振え、濡れた唇からは、抑えきれない熱い吐息が漏れてしまう。
 そりゃいくら華奢だと言っても、俺だって歴とした男なんだ。
 自身に触れられれば喘ぎもするし、勃ちもする…。
 だからと言ってだ……それが暗黙の同意の証だなんて言われても、到底納得出来るものではない。
 そう腹立たしく思う反面、何故か同時に沸き起こるもう一つの理不尽な思い…
 彼は何時だってその部分をを巧みに付いてくる。

「そんなに嫌なら、俺を殴ってでも逃げればいいだろう?悠吏(ゆうり)」

 先端から滲み出る透明な蜜を絡め取ったその指を、慣れた手付きでスルリと背後の窄まりへと滑らせながら、秀介は耳元に寄せたその唇で、耳朶を甘噛みして熱く囁く。
 『鎖で繋いでいる訳ではないのだから、この手を振り払って何時でも遠くへ逃げればいい…』
 彼は何時もそう俺の事を悪戯に挑発する。
 何年も…そう、もうどれ位こんな歪んだ関係を続けているのか判らないくらい前から。 
 俺が何も言い返せない事を、その身体で知り尽くしているくせに…
 わざと俺を試してみる……
「くっ!…ぁ…イタッ…やめ……ッ」
 頭を左右に振ってみせる俺のあえかな抗い…
 洞壁を指で掻き乱される感触に耐えようと、下唇を噛んで甘い声を噛み殺す。
 それでも零れる喘ぎ声…。
「痛いわけないだろう?もうこんなに濡れてんだ…」
 ほら…と言いながら中を掻き回す指の動きに連動して、クチュクチュと微かに聞こえる水音。
 飼い慣らされたそこから、聞こえる卑猥な音に刺激され、尾てい骨から込み上げる痺れに身体がビクッと跳ね上がる。
 もう、そこに指が何本入っているか、どんな風に弄ばれているのか…
 全く見当もつかなくなってしまう。
 ただそのむず痒いような昂ぶりを収めて欲し一心で、更なる快感を求め、妖しく背中を捩らずにはいられなくなる。
「あっ…も…秀…介……ね、ねぇ……」
 快感に膝から崩れてしまいそうになるのをやっとの思いで堪えながら、紅潮した躯体を仰け反らし、肩越しに見た秀介の顔…
 片方の口端だけを吊り上げて嘲笑うその顔を、興奮と羞恥の涙で曇る眼差しで見上げる俺が何時もどんなに遣る瀬無い気持ちでいるのか…秀介、お前は考えたことがあるだろうか?
 嫌だと頭で思っていても期待して膨らむ鼓動と欲望
 気付けば抑えるどころか、はぁ、はぁ、と甘い吐息を吐き捨てながら彼の耳元で耳打ちしている


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