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『凛』王朝
【ファンタジー 恋愛小説】

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『凛』王朝〜英雄〜-1

『凛』王朝第三話

初めて、『英雄』と呼ばれた日を今も覚えている。とても大きな仕事を任され、あたし達はいつものようにやり遂げた。人殺しを『英雄』と呼ぶ彼等。最初は頭がおかしいんじゃないかと思ったが、虚しいような、けど満たされるような、変な気持ちになった。多分あの時からあたしは、自分の宿命を忘れたんじゃないだろうか。夢にゆっくり浸るように…。

〜英雄〜

『あ〜あ、本当にたったの1分で終わっちまったぜ。つまんねーの』
鹿島の村はあっという間に、血塗られた。ゴロゴロと転がる死体を、足で踏みつけながら、猛が不満そうに言った。
『せっかく綺麗に研いだんだけどな〜。』
龍は川で剣についた血を洗い流している。
『これくらいでいいか…。』
『何だよそれ。』
大きな風呂敷に包んで遼が持ってきた物を、猛がチラッと見る。
『銃だよ。剣もある。』
『へぇ〜、なかなかの代物じゃん。』
銃を触って、物の良さを見る。
『鹿島は、良い刀鍛冶がいる事で有名なんだ。これ以上の剣や銃を作れる鍛冶はそうそういない。』
『へぇ〜。』
そこに悠が戻ってきた。
『いい薬草はあったか?』
『ああ、なかなかいい。これでまた新しい薬が作れるかもしれない。』
悠は、期待以上にいい薬が入って嬉しそうだ。
『お前さー、殺し屋のくせして医術もあるとか、変だよな。』
『お前のその頭じゃ、無理な話だもんな、猛。』
皮肉に皮肉を返され、猛は言葉に詰まる。最もだ。

黎は、あの少女を一突きにした場所に立ち尽くしていた。別に何を思ったわけじゃない。足が動かなかった。
『黎、どうした?』
そこに遼がやって来た。
『もう帰るぞ。』
『ああ…。行くよ。』
今までにないくらい、黎は体の重さを感じた。いや、心が重かったのか。原因はわからない。とりあえず、早くこの村から離れたかった。
『大丈夫か?』
遼は、今までにない黎の様子を心配する。
『ああ、何でもないよ。おい、お前等!帰るぞ!』
遼にぎこちなく笑いかけたが、ずっと誤魔化せる自信はなかった。遼は誤魔化せない。それは、幼い時からずっと一緒だった遼を信頼しているからこそ、分かっている事だった。

黎たちは城へ帰る前に、ある村に寄った。中国人の村だ。ここに、月1で黎たちは来る。
『あーっ!黎姉ちゃんたちだ!』
子供たちは黎たちを見つけるなり駆け寄ってきた。
『久しぶりだな!』
黎は笑顔で、駆け寄って来る子供を抱き上げた。
『うん!姉ちゃんがこの前教えてくれた技覚えたんだ!』
抱き上げられた子供は嬉しそうにしている。他の子供たちは『ずるーい!』と言いながら、僕も私もと黎に寄っていく。この村では黎は、本当に人気者なのだ。
『相変わらず黎は人気者だな。』
『当たり前だ!何たって黎はこの村じゃ、天使のヒロインなんだからなっ!』
あまりの人気ぶりに呆れた様子の遼を横目に、猛は嬉しそうだ。
『何だ、それ。』
とそこにいつも通り悠が突っ込む。
『だってよぉ、黎の笑顔ってたまらなぁ〜く、可愛くね?』
猛は既に脳内が恋愛モードだ。
『まぁそうかもな。ああやって笑う黎は、ここでしか見れないもんな。』
遼が何となく言った言葉に、他の3人は静かになった。頷きこそしなかったが、遼の言っている事は暗黙の了解で分かっていた。


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