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これを愛だと言うのなら
【熟女/人妻 官能小説】

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これを愛だと言うのなら-7

(解っていながら…………?)
「おはようございます」
ビクッとして真奈美が振り向くと、ダイニングルームのドアの前で達郎が立っていた。
昨夜の少し皺だらけのスーツを着て、加えてきっちりとネクタイも締めてある。
「あ、お……おはよう」
慌てて返事を返すと、にこっと笑った達郎に心臓が波打つ。
つい見惚れてしまった真奈美は、やっぱり可愛いなぁ、なんて思った。




朝食を食べた後、達郎は
「一度アパートまで帰らないと」
と言い、昨夜の事が微塵も感じられない程、サッパリと出て行ってしまった。
ダイニングテーブルで安堵しながら、真奈美は少し裏切られた気持ちだった。
旦那もいて何一つ不自由が無いのに……
(我が儘だって解ってる。だけど)
真奈美は思う

(だけど……)

少しだけでも良かったと

(達郎さん…)

毎日を壊してくれると、少しだけ期待していたのかも知れない。


「真奈美」

呼び掛けられ、一瞬心臓を掴まれた様な衝撃が走る。
真奈美は、バクバクと唸りをあげる心臓を抱き、ゆっくりと振り返った。

「達郎は?」
そう言う泰明は、パジャマ姿のままでダイニングテーブルにつく。
全てを見透かされているのではないか、と真奈美は波打つ心臓を落ち着かせながら思った。
「つい先程帰りましたよ。一度アパートに寄ってから会社に向かうそうです」
真奈美は努めて平静に日本茶を注ぐ。
いつもはパン食なので専らコーヒー党だが、ゆっくりとしたい朝や、二日酔い、体調不良で胃に負担を掛けたくない時には、日本茶を出すのが真奈美の気遣いだった。
「はい、熱いですからね」
コトリ、と音を立て泰明の前に湯飲が置かれる。
濃い藍色の手焼きの湯飲茶碗。泰明の食器や小物は大抵青が多い。
夫婦だと対の物が多くなる。子どもが居ないと特に、だ。
薄紅色の手焼きの湯飲茶碗を、真奈美はゆっくりと口に運んだ。

「昨日は、楽しかったか?」

またもや、真奈美は血の気が引く思いだった。
唇が青ざめ、上から冷や水を浴びた様に心臓が震える。
(何か答えなくては…)
真奈美は粟立ったうなじを震わせながら、賢明に答えを探す。
泰明が起きていた迄の時間の事だろうと、真奈美は祈りながら言葉を紡いだ。
「え、ええ。昨夜のお食事ですよね。久々に笑って…」
「達郎、若いもんな」
遮る様に、泰明は決定的な言葉で真奈美を黙らせた。
テーブルに肘をつき、掌に顔を乗せてにっこりと泰明は微笑んでいる。
真奈美の顔色は蒼白で、唇を震わせていた。


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