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I's love there?
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I's love there?-5

「……え?」
「ひどいよ。あんなところに置いていっちゃうなんて」
「…あんなところって……ホテルのコト?」
 他にどこがあるのよ! そう言いたいけれど、込み上げる感情に声が出ない。
 どうせ、“だからさっき謝っただろう”って言われるのだろう。そう思ったら泣きたくなった。
 長い沈黙の後、鼻をすするような声がして、私は耳をうたがった。まさか、泣いている……?
「やっとおまえらしくなったぁ。よかった」
 恥ずかしげもなく涙声で話す翔太。あんまりびっくりして涙が引っ込んでしまった。
「窓の外、見て」
 そう言われて覗くと、下に翔太の姿があった。
 部屋着のままあわてて外に出ると、玄関のドアが閉まるよりも早く抱きしめられた。

「最近、麻衣が急に大人になったような気がして、さみしかったんだ。前みたいに嫉妬してくれなくなったし。だから俺……」
 言葉につまった翔太に、私はピンときた。「あのときの猛くんのメールも、ホテルに私を置いていったのも、全部計算だったんだ?」
 無理やり体を引き剥がして問いただすと、翔太はおずおずと
「…お、怒ってる?」
と聞いた。そんな翔太がかわいくて、怒る気も失せてしまう。私は思わず声をあげて笑ってしまった。

「ごめんな」
 今度は真剣に、翔太が言った。
「大好きだよ、麻衣」
「うん。私も」
 そしてまた抱きしめあう。
 誰かが横を通り過ぎて言ったけれど、周囲の目はどうでもいい。翔太の胸は温かくて、いつまでもこうしていたいと思った。


 
 翔太と別れ、部屋に戻った私は、ベッドの上に投げ出されている携帯電話が目についた。
「サリーちゃんにまだメールをしていないんだった」
 画面を開くと、今度は迷うことなくメールを打つ。今日のお礼を丁寧な言葉で綴って送信すると、ふたたびベッドに倒れこんで目を閉じた。
 さっき会った翔太の泣き顔や抱きしめられたときの暖かさを想い、幸福に浸っていたかったけれど、ときおり思い出すオレンジ色の風景が私の心を乱し、集中することができなかった。

 だいぶたってから、サリーちゃんから返事がきた。簡潔にひとこと『お大事に』とだけの内容を、何故か私はずっと見ていて、なかなか携帯電話を閉じようとはしなかった。



「おはよ!」
 がたんと音とともに声がした。涼子が前の席に腰掛けて言ったのだ。私は今朝もいい天気だねぇと窓の空を見上げながら挨拶を返した。
 涼子は何も言わず、机に肘をついたまま何か探るような表情でじっと私を見つめている。
「どうかしたの?」
「うぅん。昨日、どうだったのかな、て思って」
 そう言いながら涼子はちょっとだけ口元を緩ませた。
「めずらしいね。涼子が私にそんなことを聞くなんて」
「まぁね。マンネリカップルの話を聞くのはつまんないからね。でも最近なぁんか怪しい雰囲気だったからさ。昨日の久々デートで何か面白いことでもおこってないかな、て思って」
 ギクッとした。するどい。
「面白いことなんてないよ。昨日も普通に楽しいデートだったよ? 今日、またデートだし」
 私は見栄を張った。猛くんの友情に負けたなんて、かっこわるくて涼子には言えない。 でも今日もデートなのは本当。昨日別れる間際に翔太が言ったのだ。デートのやり直しをしよう、と。


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