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I's love there?
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I's love there?-16

「引越しをするの?」
 私はソファに座ってココアをすすりながら聞いた。
「あぁ、姉ちゃんだけね。結婚するんだ、今月の末に」
「ふぅん。いいなぁ」
 そう言いながら翔太の顔が浮かんだ。
『いつか結婚しようね』
 付き合い始めた頃に何度も交わした約束。今思えば、とても幼い恋だった。
 じわりとにじんだ涙に気付かれないよう、話題を変えた。
「ねぇ、にゃんこの名前、なんていうの?」
「あぁ? ……名前? 猫の?」
 歯切れが悪いサリーちゃん。目が泳いでいる。
(猫を探しているのかな……)
「あの猫も、姉ちゃんが連れていっちゃうんだ。もともと、姉ちゃんが連れてきた猫だし」
 話をそらされて、私は意地になった。
「な・ま・え!」
 キッと顔を引き締め、サリーちゃんを見つめる。
「あき」
 じらしたわりにはあっさりばらした名前に、疑問を持った。
「猫の名前、あきっていうの?」
「あきは姉ちゃんの名前」
 私ははぁとため息をついた。
(教える気がないんだな……)
「わかった。もういい。サリーちゃんは恥ずかしくて呼べない名前をつけたんだね」
 もう一度ため息をついてココアをすすった。
(これで教える気になったでしょ)
 そう思ってちらりと顔を覗くと、サリーちゃんは声を殺して笑っていた。
「な…なんで笑うの!」
 げんこつでポコポコと頭を叩くと、サリーちゃんはこらえきれずに声を出して笑いだした。

(思い出した。サリーちゃんは笑いのツボがみんなと違うんだった)

 笑いころげるリーちゃん。バカにされているようで腹立たしい。背中を向けて、ココアを飲み干した。そして気がついた。
(私、元気になっている)
 あんなに重かった心がスッキリしていた。

 いまだに笑っているサリーちゃんの声に私もつられて顔がにやけ、じわじわと幸せな気分になっていくのだった。


 身体がすっかり暖まってから、私はサリーちゃんが漕ぐ自転車の後ろにまたがり、家に帰った。
 別れ際、帰ろうとするサリーちゃんの腕を掴み、また涙がにじんだ。今度は翔太を思い出したのではなかった。サリーちゃんと離れるのがさみしくて、つい、掴んでしまったのだった。
 そんな私を不思議そうに見つめていたサリーちゃんは、フッと笑顔になり、また泣きたくなったらあの公園においでよ、と行って去っていった。




 そして、朝がきた。昨日泣きすぎた目は腫れて重かったけれど、気分はすがすがしく、どこかウキウキしていた。
 早目に学校に着くと、すでに涼子は自分の席に座っていた。

「おはよ」
 声をかけて、私も後ろの席に座る。
 くるりと体を回転させて、涼子が私の顔を見た。
「おはよ。……目、ぶさいくだよ」
 いつもだったらムッとする涼子のストレートな言葉。でも不思議と嫌ではなかった。気を遣って優しい声をかけられたら、もっとみじめだったに違いない。
「ぶさいくなのはいつもですから!」
 冗談めいて私が返すと、涼子はフフッと笑って、
「麻衣はかわいいよ、ホント」
 と言ってにこっと笑った。


「私、翔太と別れるよ」
 話が途切れたときに、穏やかな気持ちで私は言った。
 今朝早く来たのはそのためだった。翔太よりも先に涼子へ言おうと思ったのは、せめてものつぐないをしたかったからなのかもしれない。勘違いとはいえ、一度は疑ってしまったのだから。


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