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『好き』の言の葉(ことのは)争奪戦!
【同性愛♂ 官能小説】

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『好き』の言の葉(ことのは)争奪戦!-4

4  唇の間から差し込まれた舌は、まるで生き物のように口腔内を彷徨う。縦横無尽に攻め立てるその刺激に、体は熱くなって、ゾクゾクするような感覚に、体の震え止らなくなる。
 雅紀の唇で塞がれていても、『うんっ…っ』と篭った声が漏れてしまう。
 指で優しく俺の髪の毛をすかれる…それだけで、体がビクッと反応してしまう。
 唇を離した雅紀と目が合う…恥ずかしさで、逸らしたくなる視線をすくい取る熱い眼差し。
「朝月…お前が嫌なら、今だけでいい…このままでいてよ」
 縋るような瞳が痛い…
「おまえは、俺に援交女や売春婦みたいなことをさせる気なのか?」
「そうじゃない。お前が嫌なのはわかってるから。俺だってお前じゃなかったら男なんてゴメンだぜ。それでも…結婚なんて話を真に受けてしまい、気持ちを抑え切れなくなってしまって、所詮かなわぬ恋だと分かっていても、愛を打ち明けずにはいられなかった…そんな間抜けで哀れな男の最期の望みだ。多くは望まない。安心しろ。少しの間こうしていて欲しいだけだよ。」
 そうして、『お願い…』と蚊の鳴くような声で囁いた。
 『天上天下唯我独尊』という言葉が誰よりも似合う…それが俺の知っている雅紀。
 その男が今、恥も外見も…そして、プライドさえも金繰り捨て、俺の目の前でひれ伏している。
「嫌なら、遠慮しないで言ってくれ。下手な優しさは返って傷になりやすい」
 そうだ。男なんてまっぴらだと言ってやればいい。
「嫌ならこの手を振り払って逃げたらいい」
 力なく背中に回させたこの腕を振り払うことなんてどうってことないじゃないか。
 それなのに、こんなに嫌だと思っているのに…

 誰か教えてくれよ
 こんなに優しくて愛しいこの手を振り解く、その方法を……

 理性と本能が胸中でせめぎあう…
 肯定も否定も出来ないでただ、茫然自失でいる俺に、貴公子然とした涼やかな容貌の雅紀が無言のまま、こちらに悲しい目を向ける。
 その潤んだ瞳が、『殺すなら一思いに殺(や)ってくれ』と懇願する。
「雅紀…俺は馬鹿なのかな。それとも小さい人間なのかな。あんなに夜毎、真鍋の性教育受けてるというのに、雅紀の気持ちを素直に受け入れられない。俺は…お前みたいには素直になれないよ」
 そうだよ、こんなに好きなのに……
 これが、雅紀の気持ちに対する、俺の精一杯の答えだった。
 目を逸らし、俯く俺を優しく手繰り寄せ、胸の中に抱きしめた雅紀が、真っ赤に紅潮した俺の耳を甘噛みにして呟く
「朝月、やっぱ俺、お前のこと好きだわ」
 その声音を発した唇に口付けられて、こんなに恍惚の表情を浮かべている。
 それに一番驚いているのは、やっぱり、俺自身だった。

 雅紀に跨ったまま、ここにいたってまだ決断を躊躇っていた。
 雅紀は、肉体的にも精神的にも俺を征服しようとしくる。
 触れるか触れないかといったスレスレの所で、その細い指先が背中や脇腹、首筋を、這い回る。
 腰の奥がゾクッと熱くなり、当惑した甘い声が漏れ、その度に羞恥の波に襲われる。
「あっ…やめろ…くすぐったいって…んっ…っ」
 そんな俺の姿を嬉しそうに下からジッと見据える雅紀に、やめろと言っても、逆効果。
「そんな仔犬のような目で見るなよ。もっと苛めたくなる」
 やめる気など更々ないとばかりに、ぴしゃりと言い返される。
「それに、嫌って言っても、これじゃぁ、説得力に欠けるよ」
 雅紀が下腹部を指差し、酷薄に笑う。
 そこには、密着し、姿こそ見えないが、彼の言葉と巧みな仕草で散々煽られ、熱を帯びた、欲望に直結した中心がある。
 恥ずかしさで頭の中がスパークしそうになる。
 勿論、一応は、離れようと身体を逸らすが、ガッチリと捕まえられている力は、俺が敵う相手ではないと、はなから分かりきっていた。
 それでも、なんとか逃れられないかと抗う。
「朝月」
 不意に強く名前を呼ばれて、空回りの動きを止める。
「朝月、大丈夫だよ」
「な、何が大丈夫だよ…」
 訝る俺に『だって、ほら、一緒だろ?』と呟き、俺の手を捩る様に後ろにして後ろ手に回した。
「!!」
 手に触れたのは、欲望をたぎらせ屹立した雅紀の熱い塊…俺は思い切り狼狽した。
 と同時に一気に沸き起こる、雅紀をここまで駆り立てた扇動者は、俺だ、と言う不思議な優越感。
 当惑の表情を隠せないでいる俺の首を抱き寄せ、一方の手のひらで中心をそっと包み込む。


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