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【青春 恋愛小説】

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夏〜第一章〜-2

「じゃ〇んってサイトなんだけどさ」
ジャージの顔がすぐ横に並んだ。髪が僅かに俺の頬に触れる、女の子独特の柔らかな匂いがした。
だが、肝心のジャージは携帯に興味津々と言った様子で、顔の距離になど気付いていないようだった。
とウェブに繋ぐ寸前に、俺は気づいてしまった。
「圏外か…」
俺は聞こえるか聞こえないかの声で呟き、携帯を閉じた。
先進国日本、意外にも不便なものだ。
「どうしたんですか?」
「この近くに宿無い?」
このまま見つけることができなければ、最悪ここで野宿と言うことになる。
それだけは避けたかった。
「うち民宿やってますけど」
「是非ともお願いします」
思考時間0.1秒。俺は立ち上がり、アイフルのお辞儀の角度でお辞儀をした。
渡りに船とはまさにこのことだ。しかも民宿、値段も手頃なことだろう。
「値段は?」
「一泊二食付3000円です」
予想以上に恐ろしいほど法外な価格だった。もちろんいい意味で。
「安いな」
「安さだけが取り柄ですから」
俺はとりあえず雨風防げれば他はどうでもいいと思う人間だ。安さ、それだけが俺に取っての宿の判断材料だった。
俺は大きく伸びをし、本殿の方へと歩いて行った。
「どうしたんですか?」
後ろからジャージの声。俺は振り返らずに答えた。
「せっかくだから賽銭入れてくる」

本殿を近づくに連れて、胸騒ぎは一層酷くなった。
それは苔むした狛犬に対してでもなく、すっかり色が落ちてしまった屋根に対してでもない。
紛れもなく南京錠の掛かった本殿の戸の奥にあるものに対して反応していた。
「あの中には何がある?」
「その人が死んだ場所があります」
少し後ろの方でジャージの声がした。
その人とはたぶんさっき言ってた未練を持って死んだ人のことだ。
「なるほど」
とは言っても、なぜ俺はこんなにまで強い胸騒ぎを感じるのだろう。
それほどまでに強い念がここに宿っているのか、それは俺だけに感じる胸騒ぎなのだろうか。
「なあ」
思い切って聞いてみることにした。
変に思われようが、この疑問は解消して起きたかった。
「ここに来ると違和感とか胸騒ぎみたいな物を感じない?」
俺は振り返り聞いた。少しの表情の変化も見逃さないために。
ジャージの顔に一瞬だけ何とも言えない表情が浮かんだ。
それは驚きの中に僅かな悲しみを織り交ぜたような、本当に何とも言えない表情だった。
「特には感じませんね」
明らかにとは言わないが、おそらく嘘だ。
俺はそれには答えず、本殿の裏手へと向かった。
そこにも何かを感じた。行っておかなければ行けない、体がそう言っていた。

そこには腰の高さほどの石の柱が二本、地面に刺さっていた。
完全な日陰にあるため、その柱の足下には片栗やドクダミがひしめき合って生えている。
胸騒ぎはますます激しくなった。まるで心臓を直接撫でられたような不快感が俺を包んだ。
それでも俺はさらにその石の柱に近づいていった。
そして遂にそれに触れた。
その瞬間、激しい頭痛、吐き気に襲われ俺はその場に倒れた。
これは墓だ。そして俺はこの二人を…殺した。
「大丈夫ですか?」
ジャージが駆け寄って来る。それはまるで地上から水中へ声をかけたように、遠くの方からの声だった。
「やっぱーーー」
もう聞き取ることさえ出来ない。意識が薄らいでいく。
ああ、運命は動きだしたのだ。
ゆっくりとその眠りから覚めて


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