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バトンタッチ。
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バトンタッチ。-1

厚い手。
熱のこもった手。
震える手。
湿った手。

今までどれくらい…

そうどれくらいだろう。

手を手が触れ合う瞬間におれはどれだけのものを託されていただろうか。 

それは気付かずに受け継いだ物。 

重すぎて捨てようとしたもの。 

それでも捨てきれなかったもの。 
大切なもの。 

たくさんあったんだろう。 
今まで気付かなかったバトンタッチ。 

初めて気付いたのは 
祖母が亡くなったあの日。
おれは逃げた。 
死を受けとめられなかった。 
だから涙も出なかった。
身近な者がこの世から消えること、消えてしまうという運命があることを理解したくなかった。 
だから逃げて逃げて目を塞いでいたんだ。 

何週間か経って、仏壇に祖母の写真。モノクロの写真。 
天井近くに掲げられた祖母の笑顔を見た時に、止まらなかった。 
拭いても拭いても涙が流れる。 
嫌悪感を感じた。 
弔うことすら避けてしまった馬鹿者の自分に。 
「おばぁちゃん…ごめんなさい。」 
一人仏前で謝った。 

気付くのが遅すぎた。 
後悔が拭えない。 
簡単に消え去るべき感情ではないと思った。 

ばぁちゃんの死がおれに教えてくれたもの。 

生きる意味。 

死ぬことを前提にしてどう生きるのかを。 

ばぁちゃんは教えてくれた。 
ばぁちゃんはいつもの笑顔で六畳の居間の上から微笑んでくれていた。 

生きる意味をバトンタッチ。 

消える時に持ち得るものなど何もないこと。 
地位も金も名声も。 
思い出さえも…… 

すべてが消える。 

真っ暗な闇の中には何もないんだと思い知らされた。 
だったら生きる意味ないじゃん。 
最初はそう思った。 

結局残せないなら、 
何にも意味もない。 
努力することも虚しいだけ。 

丁度いい結論を逃げ道にした。 

生きていく気力が抜けていった。 

そんな時に確かに言った。死んだはずのばぁちゃんはこう言った。 
「それはちがうんだよ。
生きる意味はちゃんとあるから。
あんたが誰かに残ればいい。
まだ生きてる誰かに託せばいいんだよ。」

優しくばぁちゃんは諭すようにおれに言った。 

すべては消え去っても、誰かに託せる。 
自分の思いも思想も情熱も。 


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