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迷惑メール
【ミステリー その他小説】

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迷惑メール-6

ティロリラーパラリルラー♪
 From:嵯峨野
   「話したいことがあるんだが、明日長谷川とまた図書館にきてくれ。」 
やはり嵯峨野は嵯峨野だった。嵯峨野のやらないは、やるという意味なのだ。俺は、返信はしなかった。嵯峨野に対する嫌味ではない。なぜかは自分でもわからなかった。
  その日の夜、やはりメールは来た。
ティロリラーパラリルラー♪
From:長谷川 冴子 先輩
   「会いたいの、眠れないの。どうしても会いたい。嫌われていてもかまわない。会ってくれますか?私を眠らせてくれますか?                   
この日、初めて返信した。
   「大丈夫、必ず、俺が先輩を眠らせてあげます。                  
日曜日、図書館に行くと嵯峨野と長谷川、そして見慣れぬがらの悪い男たちがいた。彼らは、やはり先輩の友達で、嵯峨野曰く証言者のようだ。「ちょっと、話してやってくれませんか?」嵯峨野は、“彼ら”にお願いすると、喜んで応じてくれた。“彼ら”の情報は、こうだった。
?となり町の暴走族の仲間に警察官僚の息子がいること。
?となり町では、夜間は暴走族が出没するためだれも出歩かなくなること。
?“彼ら”は、この暴走族をつぶそうとしているのだが、警察が邪魔をすること。

この証言と俺たちが昨日持ち寄った情報をあわせた結果、結論がでた。
「先輩は、殺され官僚息子の圧力によって自殺にされた。」俺は、怒りが抑えきれず、おいてあった本を地面に叩きつけた。「この事実を警察に持っていこう。」俺は、テープを持ち立ち上がった。だが、それを嵯峨野は制した。「警察に言っても無駄さ。また、もみ消される。」じゃあ、どうすれば、と言う俺の言葉を予想したのか、遮るように嵯峨野は言った。
「マスコミに持っていこう。」

次の週の朝刊、トップ記事の見出しは、こうだった。
 「警視庁副総監の息子、殺人事件発覚。警察全面謝罪」

「先輩の無念も晴れただろ。」
次の日、嵯峨野は俺に会うやいなやこう言ってきた。「ああ、それには間違いないんだけどさ。」俺は、嵯峨野に謝らねばならない。「だけどなんだよ。まだ何かあったのか?」「嵯峨野、すまん。」俺は、そういって携帯を見せた。

  From:長谷川 冴子先輩
   「ありがとう、じゃあ会ってくれるのね。じゃあ以下のURLにアクセスして、登録して。そこのBBSに会う場所、書き込みましょう^^初デートなの!ああ、早く会いたいなあ。また眠れないかも(*v.v)。
     http…
「これって。」嵯峨野の顔はひきつっていた。「ああ、迷惑メールだ。」

そう、すべては偶然だった。たまたま、長谷川 冴子 という偽名を使った迷惑メールが届き、そのタイミングで先輩が殺された。すべては、運命のいたずらだった。
「でも、先輩の無念は晴らせたには違いないから。」俺は、空を見上げた。すがすがしい秋晴れの空だった。

その三日後、俺は長谷川とダムに足を運んだ。「先輩、ゆっくり眠ってくれ。」俺は、携帯と花束をダムに投げ入れた。長谷川は、横で微笑んでいる。俺が消してしまった一件目のメール。あれは、京子が送ったものだった。先輩に俺のメアドを聞き、送ったのだという。
「あたし、勇気がなかったから、でも、メールならなんとかなると思って。」
「で、内容は?どんなだったの?」
「えっと、付き合ってくださいって、メール。」
俺は、OKと書いて京子にメールを送った。
今は、携帯を変え、迷惑メールは一通もこない。

迷惑メール、それは誰にとっても迷惑なもの。
だが、時には、運命を左右する、そんなときもある。

空を見た。いつもと変わらない。秋晴れの空だった。


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