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ふぉあしー
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ふぉあしーA〜幼子パニック〜-1

「天使って一体何のことだったんだろ?」

駆が私を住宅街のど真ん中に置き去りにして、どこかに行ってしまってから早10分。
私は律儀にもその場で駆が帰って来るのを待っていた。

「でもこんなとこに立ち尽くしてるのも、はたから見たら馬鹿みたいよね〜」

あ、そうだ。コンビニで立ち読みでもしながら…

「ってこの辺コンビニないじゃ〜ん」

虚しい…
自分に自分でツッコミを入れる、この光景は虚し過ぎる…
帰ろう…
どうせ駆は、私に待ってろって言ったことを忘れて1人で家に帰るだろう。

「迎えに行ったのにいないから、心配したぞ」

そんな言葉が駆の口から出てくればいいけど、まあそれはないわね。
そんなことを考えながら足を一歩踏み出そうとした時、何かにスカートの裾を引っ張られてその歩みを止められた。

「えっ、一体何?」

後ろを振り向くが、そこには何もない…と思って視線を下げると4、5歳くらいの男の子の姿が目に入った。その男の子が私のスカートを摘んでいたのだ。

「お姉ちゃんに何の用かな?」
「ママぁ……」

男の子はそれだけ言って激しく泣き出した。



10分以上に渡って泣き続けた男の子をなんとか泣き止ませて尋ねるところによると、男の子の名前はまつうらたくや君というそうだ。幼稚園の帰りにお母さんとはぐれてしまったらしい。

「じゃあお姉ちゃんと一緒にママを探しに行こっか?」
「うん!」

私はたくや君が伸ばした手を取って、たくや君と手を繋ぐ。
この瞬間からパニックは始まったのだ。



とりあえず人の多い駅前に出れば、見つかるかもしれない。
そんな安易な考えを持って、駅前に向かう私とたくや君。
しかしもうすぐ駅という所でたくや君が急に立ち止まった。

「どうしたの、たくや君?」
「ねこさん……」
「猫?」
「うん。あそこ!」

たくや君が指差した先を見ると、確かに一匹の猫がいた。
体は真っ黒だけど4本の足の先と尻尾の先だけが真っ白な猫。

「おねえちゃん、ねこさんがよんでる。いこ?」
「えっ?呼んでるって?」
「はやく、はやくぅ」

たくや君は猫が駆け出した方に私を引っ張っていく。
猫なんてすぐに見失うと思っていたのだが、その猫は時々立ち止まり、私達がついてきているのを確かめるかのように振り向く。
そしてたくや君が猫に触ろうとすると再び走りだす。


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