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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈封縛篇〉前編-9

「避難は只今進行中です。第一班が城に到着しました。城までの道中、所々ですが地割れが生じております。」

川の流れも早く、川での救出作業をしている班もあったと報告を続けた。予想どおり被害が出始めている。ふとナタルが顔を上げた瞬間のカルサの表情は、平然を装っているが複雑だった。

いかして安全を守るか、城に避難させる以外にも手段をとっているが更に必要になってくる。

よく見ると汗をかいていた、走ってきたのだろうか。それとも焦り?ナタルの頭の中で様々な考えがめぐる。しかし、カルサ・トルナスが人前でしかも、この状況で思いを顔に出すだろうか?

よく見ると息も切れている。

「陛下、もしや力を使われているのですか?」

ナタルの言葉に周りにいる者全ての視線がカルサに集まった。まさかという言葉がどこかから聞こえてくるようだ。

「心配ない。皆は任務に就いてくれ、事は一刻を争う。目の前の事だけに集中しろ、いいな。」

カルサの一声で任務のあるものは持ち場へと戻っていった。その場に残ったのはカルサ、サルス、ナタル、兵士数人のみ。静けさを取り戻した王座の間にナタルの謝罪の声が響く。

「陛下、申し訳ございません。無礼をお許しください。」

「構わない。お前に見破られてしまったのは私の落度だ。気にする事ではない。」

兵士が持ってきた地図を広げながらカルサは答えた。横にいる秘書官サルスとて、大して気にも止めていない様子が分かる。

だがナタルには申し訳なさが気持ちから離れない、分かってしまえばカルサの体が心配でたまらなかった。

「ナタル、どの辺りだ?」

「はっ。」

気持ちを切り替え、地割れ発生場所を指差し地図に明記させる。印が付けられるごとに緊張が高まっていく。ナタルによって示された箇所は予想以上に多かった。

「多いな。」

厳しい現実を目の前にして声を発せられたのはカルサただ一人だった。他の者は皆、地図を見たまま息を飲むだけ。

ある程度の人払いをした後でよかったと、サルスは心底安心した。いま下手に情報を与えると不安から被害が増えるかもしれない。考えるだけで恐ろしかった。

「詳しくは貴未から聞いた方がいいな。」

「だろうと思って戻ってきてるよ。」

突然の貴未の登場に驚き、反射的に声のした方向を見た。

そこにはナタル同様、全身ずぶ濡れで泥や血やら、痛々しい姿の貴未がいた。彼自身のものか、他人のものか、彼の周りで何かが起こった事だけが姿から伺える。

「貴未、その格好はどうした…?」

サルスが心配そうな声でたずねた。歩きながら近寄ってくる貴未は見れば見るほど痛々しい。思わず聞かずにはいられなかった。


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