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メダイユ国物語
【ファンタジー 官能小説】

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幕間 その一-1

        1

 翌日、マレーナは普段よりかなり遅い時間に目覚めた。陽はすでに高く昇っていた。

「申し訳ございません!」

「遅くなりました!」

 ファニータとパウラはそう言うと、それぞれ身支度をしながら慌てて主の元へ駆け寄った。彼女らには、マレーナの私室の隣室が与えられていた。今日は二人とも寝坊をしてしまったようだ。

「いいのよ。昨日あんなことがあったばかりですもの。わたしも、昨夜はなかなか寝付けなくて」

 三人とも昨日は心身ともに極限まで疲労していた。食事もそこそこに床に就いたのだが、昼間目の当たりにした惨状が頭から離れなかったのである。

「それに、今のわたしたちは囚われの身です。どうせ普段どおりの生活もままならないでしょう」

 王女は顔に苦笑を浮かべて自虐する。

「……すぐにお食事のご用意をいたします」

 三人は昨日からろくに食事を口にしていない。空腹だから気も滅入ってしまうのだ――そう思ったファニータは、給仕服の上に前掛けを着けながらマレーナに言う。

「パウラは姫様のお着替えをお手伝いして」

「はい、ファニータ様」

 続けてファニータは年下の侍女に指示を出し、王女の私室を出て行った。

 現在マレーナと侍女たちの三人は、城の塔に軟禁されている。エレベーターと非常階段へ出る扉の前には、それぞれ兵士が見張りに立っており、城の外はおろか、城内のほかの場所へも自由に行くことが出来ない。だが、手洗いや台所など、同フロア内の生活に必要な部屋への行き来だけは許されていた。


 突然、窓の外でドンと音が鳴った。防音と防弾に優れた窓であるため、くぐもった音ではあったが、実際にはかなり大音量なのだろう、外の空気が震えて窓枠がビリビリと鳴った。

(――また?)

 寝間着から普段着に着替えたマレーナは、窓に近寄り外を見る。目に入る範囲には、昨日のような黒煙や炎は見られなかった。

「マレーナ様、あれっ」

 別の窓から、やはり外の様子を伺っているパウラが、外を指差しながら声を上げた。彼女の指差す方を見ると、そこは城内の庭園の一角、式典などを行うための広場だった。

 そこには昨日やってきたユゲイアの兵士を含め、大勢の人が集まっていた。

 ――ドン

 再び音が鳴り、広場に設置された大砲が煙を吹いた。砲弾を撃ち出したのではなく空砲のようだ。

「いったい何ごと?」

 マレーナは錠を外して両開きの窓を開けた。

 庭園の騒ぎとは裏腹に、暖かく穏やかな風が流れ込んできた。

 広場からは、兵士たちの間で歓声が上がっていた。彼らが目を向ける先には、大きな縦長の四角い物が置かれている。

「マレーナ様、あれは何でしょう?」

 パウラが指差しながら尋ねる。彼女は元々それを気にしていたようだ。だが布で覆われたそれが何であるかは、マレーナにも分からなかった。

 二人が塔の部屋から様子を見ていると、やがて広場に数人の男がやってきた。特に大仰な武装をした兵士二人を先頭に、手枷と足枷で自由を奪われた男が数人、鎖に引かれて後に続く。罪人のような姿をした彼らは、頭に布を被せられているため、何者なのかは分からない。

 そしてその最後尾には、見知った顔があった。オズベリヒだ。彼は四角い物体の前で立ち止まると、手にした筒状に丸められた紙を広げた。兵士たちは一斉に黙り、広場が沈黙に包まれる。

 そんな兵士たちを見回し、オズベリヒは手にしたそれを読み上げた。

「ラバーン王国は長年に渡り、私利私欲のために我々ユゲイアを利用し、大量殺戮を行ってきた。にも関わらず、卑劣にもそれを隠蔽してメダイユ連邦国の中心に君臨してきた。そのような愚行は決して許されるものではない」

 オズベリヒが言葉を区切る。すぐさま大勢の兵士たちから歓声が上がる。

「歴史から抹消され、長年虐げられてきた我々ユゲイア王国は、本日ただ今を以てラバーン王国に成り代わり、メダイユ連邦国の、いや惑星オセリアス全体の統治国となることを、ここに宣言する」

 兵士たちの歓声がさらに高まった。

「我々が何よりもまず最初に行うべきことは、そんな罪深いラバーン王国に対する断罪である!」

 続けてそう言うと、オズベリヒは塔の上に視線を向けた。まるでマレーナが見ていることを知っているかのように。

「故に、本日ただ今この場にて、ラバーン国王バルトロ・イェンネフェルト以下、国政の中心に携わってきた者全てを処罰するものとする」

 オズベリヒが言い終えるや否や、二人の兵士が広場中央に置かれた四角い物体に被せられた布を取り払った。

「あ、あれは……!」

 塔の上から見ていたマレーナは驚きの声を上げた。


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