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テレス・キオネ
【ファンタジー 官能小説】

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テレス・キオネ-10

私もここへ来てから調合した薬を店に売ってやった。
初めてで信用もないのであまり高くは売れなかったが、人気が上がるのはわかっている。
「次来た時には正当な値段で買ってもらうからな」そう約束して、持っている一部だけを手放した。
たまに行き違う薄汚れた旅姿の人は、その歩き方からして、帰郷してきた労働者だろう。今年は雪深かった、やっと峠の道がつながったのだ。
嫌な胸騒ぎがする。できるだけ急いで家へ戻った。
家は静かだ。
当然そうなのだが、嫌な静けさというものがある。母と娘を外に残し、ひとり家の中へ入った。
娘の部屋だ、おとなしくできないかもしれないキオネを、部屋に閉じ込めて行ったのは間違いだったかもしれない。
男が倒れていた。
「急にこの男が入ってきたのよ、そして私を襲ったの」裸のキオネの肌には、ほとんど血はついていない。
ならば、「血を求めたのではないのだな」
もう男に息はなかった。
「当たり前よ、男なんてきたならしい」
男は、きっとこの家の主人だろう。見知らぬ娘に家族のことを訪ねようとした矢先、殺されてしまった。といったところだろうか。
それとも半裸のキオネに欲情し、襲おうとでも思ったのかもしれない。
「乱暴されたのか」
「そうよ。だからしかたなかったの」
それがどうかはすぐにわかる。
「かわいそうに、ひどくされてないか見ておこう」足を広げさせて、中をのぞく。
「おや、きれいなものだ」
「あたりまえだわ。おまえ以外に触らせたりしないわ」
胸が熱くなる。こういう一瞬に、この娘の気付いていない魅力が出る。
抱きしめてやりたくなる。
だが、今はそれどころではない。
≪見せるわけにはいかないな≫ 父親のこんな姿を見ては、信頼も惑わしもいっぺんに飛んでしまう。
いったん二人を母親の部屋に入れて眠らせた。
遺体は、今は水の枯れた井戸に投げ入れ、床を水で洗い流した。
それから、問題が消えたことに気が付いた。父親が帰ってくることはもうないのだ。
井戸にはいくらかの土を盛ってやればいい。
手元には男の半年働いた金だけが残った。
私が正式な夫であると認識させられた後は、母親への惑わしも徐々に弱めていった。
そして外へ働きに出させた。
夫の帰りを守る貞淑な妻という姿も改めさせた。出稼ぎで夫を亡くした妻なのだ。
未亡人として男を見つけさせた。この土地で女と子どもだけでは冬は越せない。
どういう選択をするにしても、母親に連れ合いがいた方が私は動きやすくなる。
それから半年、収穫祭も終わり、母親の再婚も決まった。
カリスは徐々に大きくなっていくおなかを嬉しそうに眺めている。
キオネもそんなカリスをじっと見ている。自分のお気に入りの化粧品を見る目だ。
だが、キオネにも月のものが来なかったのがわかった。
「先月はどうだ」
「さあ、レディーに聞くことじゃないわ」
「私は医者なのだよ」
「さあ」


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