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月灯り
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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小説の読者-1

 昔は混浴だったという伊豆の温泉旅館の窓辺で、私たちは海を眺めていた。夕食の時に、軽く日本酒を飲んだが、ほろ酔いというほどにもならなかった。そのことが、何だか、これから、この部屋に若い男でも来るような予感をさせてしまうのだが、今回は、ただの旅行だった。ただの旅行でさえ、あの奇妙な遊びがあるように予感してしまうほど、私たちは、あの奇妙な遊びに熱中していたということなのだろう。
「小説サイトに掲載したから、いくつかメールが来ているのよ」
 妻は、どこかの小説サイトに私たちの如何わしい性の営みのことを小説の形にして掲載していたのだ。そのことは知ってはいたが、それを読んで欲しいようなことを彼女は言わなかったので、あまり関心のないふりを私はしていた。
「そりゃ、女性名でエッチ小説を書けば、それなりの反応があるでしょう」
「そう思ったから男性名で書いてみたの。だって、女目的の男には興味がなかったから。私は夫婦と遊びたい男にしか興味がなかったから。だから、男性名にしておいたの」
「なるほど。じゃあ、そこに反応した男たちは本気なんだね」
「ところがね。驚いたことに男だけじゃなかったのよ。女の子もいたの。ねえ。女の子、呼んでみる」
「止めてくれよ。この年寄りに二人の女の相手なんて出来るはずないだろう。君一人を満足させることも出来ないから、他の男の手を借りてるんじゃないか。ああ、ボクを弱らせて早死にさせたいなら、それは良い手かもしれないけどね」
 本気だった。ハーレム願望というものが男にはあると聞くが、私に言わせれば、それは地獄であって天国にはならない。むしろ、私は三人の青年が全ての段取りをしてくれて、ギリギリまで妻を感じさせ、満足さえ、最後の最後、もっとも美味しいところだけを私に残してくれたセックスこそが天国だということを知っていたのだから。
「じゃあ、アナタの健康のために、男の人にする。でも、せっかくだから、私の小説を読んで、私たちに幻想を抱いた男の人と、一度だけプレイしたいの。ねえ、アナタ、いいでしょ」
 なるほど、妻がどのように小説を書いたのかは分からないが、それを読んで私たちに勝手な幻想を抱いた男とセックスしてみるというのは、それは面白そうだ。それにしても、妻は、どうして、こんなにも、次々と新しい遊びを思いつくのだろうか。もしかしたら、彼女こそが天性のスケベ女なのかもしれない、と、私はそう思った。
 窓の外には夜の海が見え、海の向こうには満月が浮かんでいた。都会で見る月より少し小さいような気がした。しかし、都会で見る月より、かなり明るいような気もした。


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