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医師テレスポロス
【ファンタジー 官能小説】

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医師テレスポロス-8



「我が名はテレスマニア
聖なるテトラグラマトンの流れを汲みし者
ストラスの流れを汲みしヤンシュフよ
願わくはここへ現れよ」
私は萎びた手を挙げ祭壇に向かって召喚の呪文を唱えていった。
声はかすれ、たんが絡む。
久しぶりにベッドから起きたが、萎縮してきた筋肉では、長くは立っていられない。
この魔とも関係を持ってから八十年あまり、私は医者からは、余命宣告をうけ、それより一週間は長く生きていた。最後の兆戦に立ち向かおうとしている。
魔法円の中には、今まで封印し続けた、シトリーの部品の入った瓶が並べてある。
その横には生きた羊が二頭。足を縛って寝かしてある。すべてかわいいマナが準備をしてくれた。
この子はおばあさんに近くなった今も昔の面影を残している。
黒いモヤとともにヤンシュフがあらわれた。長年の付き合いだ。
「今日は何がしたい」
「お前には血液の入れ替えや人体の接合や切除いろいろと頼んできたが、結局生き返らすことはできなかった。今日はちょっとした実験をしたいと思う」
「どうした、羊二頭とは気前が良いな。お前の病気を治してほしいのか、それもいいが、もう寿命だ。これだけは私にもどうしようもない」
「エリ卿は若さを保ったぞ」
「それは寿命が延びたのではない、寿命まで若かっただけだ。おまえも老いぼれたな、また同じ話か」
「今日は違う。まずはその羊を味わってくれ」
私は羊が萎びてていくのをじっと待った。命のなんとはかないことか。
「ではヤンシュフよ、その瓶の肉片を全て一つに組み立てよ。内臓をつなぎ血管をつなぎ神経をつなげ。その後皮膚を美しく癒着させよ」
「時間がかかるぞ」
「かまわん、私が死ぬほどの時間ではないだろう? 待とう」
じっと見つめ、作業台の上に体が出来上がっていくのを眺めた。
日が変わる。それでも作業は続いた。
ずっと見つめる私は、もう体の節々の痛みも感じない。
マナが横でずっと支えてくれた。私が乳を揉んでも自由にさせてくれたが、残念なことに手を上げ続けることができなかった。
やがて魔が声をかけた。「次にどうする」
「そこの瓶に若者の血が入っている。その体とは適合するはずだ。それで満たせ。
体温を適正に上げ細胞を目覚めさせよ。目覚めぬ細胞交換せよ」
魔が笑う。「お前の抱き枕を作るのか」
「そうだな、私はまだ若いぞ」笑ってやるが、途中でむせてしまう。
三日目のことだ。
「私は今日まで研究を続けてきたが、結局物理的な心というものが分からなかった。
だからお前の言うとおり、このままでは腐れゆく肉の人形があるだけだ。
『生きよ』と命令する者がいない」
「この肉体は、細胞の多くが死に過ぎた。もう記憶も意識も無い」
「そこでだ。ヤンシュフお前には私のこの体をやろう。お前はこの身体を喰いながら、
この記憶をその女に移せ。この意識体を女に移せ。 できるか」
「見知らぬ者にはできないと言っただろう。だがお前とはそこそこの付き合いだ。なのでこう言おう。  そんなことわかるわけがない、我でもやったことはない」
「ではやってみろ」
「失敗するかもしれないぞ」
「かまわん、それはしかたのないことだ」
「失敗させるかもしれないぞ」
「かまわん、おまえなら、恨まん」
「では、できるだけを試してやろう」
「マナ、離れていなさい」指で魔法円の線を消した。
魔が私を包みこんでいく。意識がなくなっていく。
≪マナ、マナ。この選択は間違っていなかっただろうか。このままま騙され食われて終わるのだろうか≫ そこで意識が消えた。


何度かの電気ショックが心臓にあったのだと思う。
私は目をさました。

あの魔女は正しかったのかもしれない。
わたしが命を懸け、見返りとなれば、生きてつなげられるようになるかもしれない。
そうすれば、私の犠牲は犠牲ではなくなる。
私の白内障の目から、曇りが取れていた。
マナの助けがなくても起き上がることができた。干からびた私の体が目の前にある。
自分を見た。
アルコール臭い体、好みより少し小さい乳房が見えた。それは小さく鼓動をうっている。
「姉ちゃん」私は自分の乳を揉んでみた。
≪さあ、今度は姉ちゃんの心を探そう≫


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