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カルト教団
【ファンタジー 官能小説】

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カルト教-15

「なぜ効かん」追加呪文を叫んだ。
胸がむかついてくるようなひどいものだった。信者の何人かは青い顔をして、吐いている者もいる。
「そいつにどこまでさせる気、信者が死んじゃうよ。教祖なら教祖らしくしなさい」魔女はなぜか隣のドウツを見ている。
≪この魔女は最初に会ったドウツを教祖だと思っている≫
「さあみんな、足を止めさせるものは何。
それが愛ならここにいてはいけない。
恐怖なら、逃げろ。大丈夫。この教団はもうつぶれる。だれにも仕返しはこない。
あたしを見てごらん。
これだけ言っても何も起こらないでしょ。
さあ帰りなさい」
何人かが走り出て行った。それを見てさらに多くが走り去った。
逃げ出したのはほとんどがドウツの息のかかった者だった。
残った私を信じる者たちは、守るように前にかたまってくれる。
≪この魔女は教団を潰しに来たのか?≫ それにしては、呪いに対して反撃してはこない。
≪なぜ昨日、ベッドにもぐりこんできた時殺さなかった。『あなたが知りたいだけ』とはどういうことだ≫
頭の中で思考がループし始める。 『あなたが知りたいだけ』この[点]につながる[線]が見つからない。
「何とかしろ。おまえがふがいないから信者が逃げるんだ」ドウツがわたしの後ろに回って魔女をにらむ。「さあみんな讃美歌を唱えるんです。13番です」
この指示に信者たちが勢い付いた。大声で唱え始める。しかしこれは讃美歌ではなかった。ドウツと私以外知らない最終兵器、本当は呪いの言葉なのだ。
私は何もできず、見ているだけだった。
「役立たずめ」ドウツが私の腹を殴った。何発殴っても、まだ気が済まないようだった。
信者たちは唱えるごとに顔色を悪くしていき、膝を落として、もどしはじめる。それは呪文の反作用だ。
吐いていた二人が逃げ、もうひとりも後を追った。
しかし魔女が弱る気配はなかった。
「そうだ魔女には生贄だ。生贄を捧げればいいんだ」ドウツがつぶやく。
≪馬鹿なやつ≫ 魔女と魔を間違えているのだ。
「だれも我が教団を抜けることは許さぬ。これこそ教祖様が予言した、世界の終わりだ。その女は魔女だ。毒も効かない、すなわちサタンの申し子だ。取り込まれないよう、みんな祈るのだ」
「おまえたちの呪いなんか効かない」魔女が叫ぶ。
信者の声が止まった。
「なぜ祈りをやめる」ドウツが叫ぶ。
信者は恐れの目で魔女を見ていた。
こうなっては、誰もただでは済まないだろう。≪私の行いはどこが間違ったんだ≫
目の前のカザミは倒れたまま、いまだに動かない。≪私が殺してしまったんだ≫
私も殴られた腹を抱え、声も出せなかった。
「役立たずめ」ドウツは儀式用の短剣を出し、自らの胸に当てた。「皆、短剣を互いの胸に当てよ」
信者らは恐怖の目で私を見る。
「すべておまえの責任なんだぞ、どうする気だ」ドウツが儀式用の短剣を差し出した。
≪たしかに、間違っていることが分かっているのに、見ないふりをしていた。すべては私のせいなのだ≫
私は短剣を胸に当てた。 ≪私が命を絶てば皆は助かるのだろうか≫
信者たちも短剣を出すと、ふたりずつとなり、互いの胸に当てる。
「わが合図とともに互いの心臓を刺し貫くのだ。魔女に汚され魂を奪われてはならん、自らの手で命を絶つしかないのだ」ドウツが空に五角の星をきりながら叫んだ。
わざとではないのだろうが、素人の技だ。二つの角が上を向いていた。 それこそ悪魔の印だった。
「教祖様は永遠です」信者が唱え、短剣を構える。
その声に、我に返った。胸の短剣を捨てようとする、≪こんなものを持っている場合じゃないだろう≫
「恐れるな、教祖様が皆を導いてくださる。神が導いてくださる」ドウツの声が響く。
「神は永遠なり」
「神は永遠なり」
みなが互いの心臓を刺した。


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