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「向こう側」
【ファンタジー その他小説】

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「向こう側」第四話-4

「ああ、すっかり忘れてた。本来の目的はこっちだったな。はいよ」

その袋をボートンに手渡す。
そしてボートンはショーケースの上に袋の中身を出した。
ジャラジャラと音を立てて、透明で小さな破片が現れた。

「これが『ピュアピース』、なんにも加工しとらん純粋な『ピース』だ。名付けたのは『救世主』、最初の『下の世界』の人だ。こいつを体の中に組み込むと…」

そう言いながらボートンは『ピュアピース』のひとつを取り出し、自分の右腕に押しつけた。
すると…

ズッ

腕の中に入ってしまった。
スグルは自分の目を疑った。
そんなスグルなど気にもせずにボートンは話を続ける。

「…とまぁ、こうなって初めて『ピース』としての能力を発揮するってわけだ。今までのところ、『ピース』は個人の中にある秘めたる力を目覚めさせるものと考えられて、それによって不思議な力が使えるようになるってわけよ。
だから人によって能力は様々で、あらかじめ決められているから、いくら新たに『ピュアピース』を組み込んでも新しい能力は得られねぇ。
もちろん、全ての人間が能力を使えるわけじゃねぇ。元々何にも力を秘めてない奴、使い方がわからねぇ奴、まあ大体がそうなんだけどな」

「アーリアムとかがそうだな」

小馬鹿にしたような感じでバッジは言った。

ボートンは話を続ける。

「無理やり力を引き出すから、個人差はあるが、使う量に制限がある。一晩眠りゃあ回復するがな。制限を超えると場合によっちゃあ…死に至る。それに力の使いようによっちゃあ、人を殺すこともできる。
だから昔は悪魔の破片だなんて呼ばれて、使う奴はあまりいなかった。最近はなにかと争いごとが多いから、銃器とかと同じように武器として扱われてしまう。売る側としては微妙な心境だな。
『ピース』は加工しやすく綺麗だからインテリアとしても使われる。本来はこっちのほうがいいと俺は思うんだけどな。どうだ?大体理解したか?」

ボートンがスグルのそばまで顔を近づけて聞いてくる。

「えぇ…まぁ大体は…」

(ようは魔法みたいなのが使えるってことだよな。信じられないけど)

「あの、俺にも『ピース』は使えるんですか?」

もし使えるなら使ってみたい。そう思うと好奇心旺盛なスグルはゾクゾクしてきた。

「残念だが、『下の世界』の人間には無理だ。『救世主』が実証済みだ。『ピース』が組み込めねぇのよ」

(なんだ、つまんない)

せっかくこの世界に来たのだから、何かおもしろいことをしたいと思ったスグルは少し残念がった。

ある程度説明して、ボートンは『ピース』を腕から取り出した。
組み込む前は無色透明だった『ピュアピース』がなぜか鮮やかな黄色を帯びていた。
それを不思議そうな顔をして見ているスグルを見て、ボートンが口を開く。


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