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ロスト・マイ
【ファンタジー 官能小説】

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ロスト・マイ-4

それからはあまりタイトとも遊ばなくなりました。
先生に許しをもらって、放課後にギターの練習を始めました。しかし、学校では自由に時間が使えません。
自分のを買うしかありません。
行くのは楽器屋ではありませんでした。いろんな中古品を売っている店です。
そこで一本のギターを見つけました。値段を見て、店の人に交渉します。こんな高いもの買えるはずありません。
お金はありませんが、熱意と時間はありました。
一時間を過ぎると、あたしにかかりっきりになっている時間の損失の方が値下げより大きくなりそうなことに店長も気が付きます。
追い払おうとするところを熱意とかわいさで抑え込んで、少しずつ値段を下げさせていきました。
最終値段はそれでも高いものでした。持っている額では少し足りません。
「これでお願い」といっても、さすがにもう値は下がりませんでした。
「ちょっと待ってて」そう言い残して、ギターとしばし別れます。
親に相談しようなんてこれっポッチも考えませんでした。
次の日あたしは持っている物を全部、学校の知り合いに売りました。
それとおこずかいを持って、念願のレスポールを手に入れました。
形は学校のよりおとなしい感じでしたが、その頃はエレキギターならみんな同じようなものだと思っていました。
店の人は「店長には内緒だよ」と言って、新しい弦のセットを付けてくれました。
ギターはシャラシャラと小さく鳴きます。まだアンプは買えませんでした。
それでもまあ、家での練習にはその方が好都合ともいえます。
しばらくして弦が一本切れてしまいました。元からちょっとサビていたのです。
替え方もわからないので、学校へギターを持って行って、音楽の先生に教えてもらいました。
先生に自分から何かを質問する初めての経験でした。
そこで初めてアンプを通しての音も聞きました。
学校にあったテレキャスターに比べて、少し控えめな優しい音に逆にひかれます。
≪あたしはやんちゃ坊主のテレキャスターじゃなくて、大人なレスポールなんだ≫ そう納得しました。
先生はチューニングの仕方も教えてくれました。
基本の音が440ヘルツで、音は波で、音楽だけじゃなく、理科にもちょっとだけ存在理由がある事を学びました。
学校で習ったことはそれくらいだと思います。
ああ、あとは楽譜の読み方です。変な渦巻きや、十字架には近づきたくありませんでしたが、音符と休符くらいなら友達になれそうでした。
それから1年ちょっとが経ち、ギターのコードやちょっとしたフレーズは弾けるようになっていました。
アンプも買いました。
音楽の志向も固まってきて、雑誌の広告を見て、ハードロックにはテレキャスターだったんじゃないかとも思いましたが、今持っている、どこのメーカーかもよくわからないギターにも愛着がありました。
買い物ついでに楽器屋に行くことも増えました。
顔を覚えられると、店の人が商品をアンプにつながせてくれるようになります。
今は絶対に買えないけど、そこのギターは音のクリアさと、伸びが違います。まあ、使っているアンプも違います。
「熱心だね」声をかけられました。
大学生くらいでしょうか、全身まっ黒な服を着たお兄さんでした。
「珍しいね、君たちくらいだとあっちだと思ってたよ」テレキャスターを指差します。
「たしかにね、あっちの方がハードロックっぽいよね」
「まあ、それがすべてじゃないけどね。きみ、時間ある?」急に言います。
「まあ、あるけど」そう言ってからしまったと思いました。変なキャッチかもしれません。
「この奥が貸しスタジオになってるんだ。仲間が練習に来られなくてキャンセルに来たんだけど、キャンセル料を取られるよりどうだい、一緒に中でやらないか」
「お兄さんもギター?」
「俺はベースだよ」ニコッと笑います。
「お金ないよ」


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