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安倍川貴菜子の日常
【コメディ 恋愛小説】

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安倍川貴菜子の日常(4)-2

「……エドくん続きを教えてくれないかなぁ…」
微かに震える声でエドに説明の続きを促す貴菜子にエドは貴菜子の変化を気にすることなく説明を再開する。
「ああっと、スマンスマン。で、話の続きね。まあ、サンタの力ってのは本来サンタの家系である人間にしか使えないんだけど、今回の場合は貴菜子ちゃんの指輪がサンタの力と貴菜子ちゃんを中継してくれるから最初にちょっとした契約をするだけですぐ使える様になるよ」
エドの説明に貴菜子は真顔で「そうなんだ〜」としか答えられなかったのだが、エドはそんな貴菜子に指輪を填めさせると契約をするのに使う言葉を貴菜子に教え、指輪に念じる様に言葉を唱えさせると指輪から弱い光が発せられ暫くすると元の状態に戻った。
「ねえエドくん、今の言葉って何なの?私にはさっぱり分からなかったんだけど」
「ああ、あれはカラーリット語ってやつさ。サンタ協会の本部があるグリーンランドで使われてる言葉さ」
「それでどんな意味だったの?」
「この指輪の主である安倍川貴菜子の名において命ずる。指輪に籠められしサンタクロースの力よ、契約に基づき暫し我の力になり給えって言ったのさ」
事も無げに説明するエドを見ながら貴菜子が頷きながら話を聞いていると、エドは続いて力を発動させる為の説明をした。
力の発動方法は貴菜子が驚くほど簡単なものだった。エドの話では必要な時にただ念じれば良いという話なのだ。
「それで良いの?」
「うん」
「本当に?」
「ホントさ」
「本当の本当に?からかってないよね?」
「ああ、ホントのホントだって!それにからかってもいねーよ」
何度も確認する貴菜子にエドは手足をバタつかせながら自らの正当性を訴えた。
「安倍川、こいつの言ってる事は本当の事だ。珍しくまともな事を言ってるんで俺も驚いた」
護はエドを自分の肩に乗せ真顔で再び貴菜子に契約について説明すると、貴菜子はその言葉に納得したのかまじまじと自分の指に填まった指輪を眺めるのだった。
「…と、いう事は神野くんもそのカラーリット語ってのを話せるの?」
何かを思い出したように尋ねる貴菜子に護は頭を左右に振る。
「いんや、俺はカラーリット語は話せないよ。俺だって力を使う時は安倍川と同じで意識するだけだし、新しい力を身に付ける時はさっきの安倍川と一緒で言語の部分をエドにサポートしてもらってる」
「へぇ〜、そうなんだぁ」
護の話に貴菜子の瞳は好奇心でキラキラと輝いていた。
「でも、エドくんっていろんな事を知ってるんだね」
「まあね。俺達トナカイはサンタクロースの相棒でありデータボックスであるからね。下手したらその辺の家庭用のパソコンなんかよりもデータは豊富かも知らんね」
「…いらん知識も大量に蓄えてるけどな、お前は」
得意げに語るエドに護は呆れた様にぼそりと呟くとエドは「そんな事ねーよ」と反論したのだ。
「お前の場合、常日頃くだらない事を言ったり、やたら俗っぽいものに興味を示したりしてるじゃねぇか」
「何を言うか護っち!あれは人としての日々の生活における潤いってやつじゃんか。それを理解できないから護っちには彼女の一人も出来ないんだよ」
「うるせっ。トナカイに人としての道を説かれるってのはなんかムカつくな」
護はエドを一睨みすると両手でエドの頬を引っ張り、エドも護の行為に抵抗したのだったがそれは無駄に終わった。


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