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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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憲=綺麗?-3

「おぅあ!?」
「あぁっ、コラァ!憲に何するんだ!」
「許せ、憲。そして我が妹よ。愛する彼女の頼みはきいてやらねばならぬのだ」
随分と芝居がかった口調だな、こら。
「ウフフ。つ〜かまぁえた♪」
心底楽しそうに、麻衣は倒れた憲の足首を捕まえ、そのまま『ビューティーサロン3ー6』に引きずり込もうとする。
引きずり込まれたら最後と悟っている憲は必死の抵抗を試みるも、だんだん引きずり込まれていく。
「ダイジョウブ。コワクナイワヨォ♪」
「し、白雪! た、助けてくれ! 嫌だぁ! 俺は……俺は女装なんてしたくない! た、たすけ……う、うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
ガラガラ〜ピシャッ!!
絶叫とともに憲は、手をアタシに差し伸べたままビューティーサロンの闇に消えた。ホラー映画のワンシーンみたいだったな。
そう思いながら、アタシは憲の後を追って魔窟と化した教室の扉を開けた。

「うわぁ。太田くん。よく見るとまつげ長いねぇ」
「眉毛も整ってるし、こりゃ剃らなくても大丈夫ね」
「肌もけっこうきれいだなぁ。羨ましい」
憲を女の子へと改造すべく、クラスの女子総出で憲をいじってるわけだが。さっきから嘆息の言葉しかでてきてない。
まぁ、彼女のアタシとしてはとても誇らしいんだが。
「誉められてるんだろうが、全っっっ然っっっ嬉しくない!!」
当の憲はその綺麗な顔をものすごい不機嫌に歪めている。
「ま、まぁまぁ憲。誉められてるんだから」
ふん、と憲。こりゃダメだ。
「さぁ、それじゃあ改造するわよぉ」
「う……」
マッドサイエンティストか手術狂の医者のような笑みで、麻衣が憲へと近づいていく。手にはメスの代わりにマスカラだ。
こうして、憲は女の子への道を歩み始めるのだった。


数日後
「はぁい。レディースアーンドジェントルメェーン!!」
ノリノリの極地に至った麻衣が丸めた紙をマイクのようにして叫んでいる。
「それでは……憲ちゃんの入場でぇーす!!」
そう言って、麻衣は教室の扉を指した。
どうな風になってるんだろう。あれからというもの、アタシは見事に閉め出された。
改造担当の麻衣を中心とした数人の女子以外、『憲ちゃん』を見るのはみんな初めてだ。
みんながワクワクしながら扉に注目している中、ガラガラと開いて入ってきたのは………世にも美しい憲だった。
スラリとした細身に似合うロングヘアーをかぶり、綺麗なまつげに縁取られた目、ほっそりとした顔立ちにあったバランスの取れた化粧。そして、清楚感溢れる青いドレス。
どこから見ても、美しい女性だった。
惜しむらくは、不機嫌そうに歪んだ眉間のしわが妙な威圧感を醸し出しているところだろう。
「綺麗……」
「ほ、本当に憲か、これ」
「やべ。しっかりしろ、俺。あれは男だぞ!」
「な、なんか複雑。男に綺麗さで負けるのって……」
クラスメートたちが口々に感想を述べる中、アタシは複雑だった。
なんか、嫌だ。
そう思った。
綺麗だけど、憲じゃない。ってそりゃそうか。女装してるんだから。
多分、アタシの惚れた『男』の憲じゃないからだな。
「ほら、白雪も愛しの『彼女』に何か言ったら?」
「あー、なんだその。綺麗だぞ、憲」
「かっこいいなら嬉しいんだがな…」
そのまま憲は盛大なため息をついた。

その後、ちょくちょくと改良を施された憲(麻衣曰わく『憲ちゃんMK−4』らしい)は時の流れに抗えず、文化祭当日を迎え、今に至る。


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