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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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混沌とした世界(前編)-7

倉庫の番人の武器商人が、ガルドに話しかけてきた。

「チャクラムというのか、あれは。ここにあるのか?」
「貸し出されている分しかない。あれは使いこなすのが難しい。だから在庫が少ない武器だ」

ガルドはチャクラムに対抗するための武器があるはずたと、倉庫の番人の武器商人に言った。

ガルドが両手に握ってきた武器を見て、チャクラム使いの闘士の美青年の顔から微笑が消えた。
コの字型をした柄の平行な2本の枠の間に、前後2本のグリップが刃と垂直方向に渡されている。
この形状によって、装備すると握りこんだ拳の先に刃が伸びる形になり、拳を突き出すことで正拳突きの要領で相手に刺し傷を与えることができる。
斬りつけることよりも刺突することに重点を置いた短剣であり、鎧などの重装備を貫き通すのに用いられる。

(ジャマダハルだとっ。この男も貴族に雇われている傭兵か?)

フェルベーク伯爵領にいる貴族たちは、王都の宮廷議会の権力争いで都落ちしてきた貴族たちではあるが、資産は小貴族よりも上で裕福である。
賭けで損をしないように闘技場の大会へ腕の立つ傭兵を参加させている。
チャクラム使いの傭兵を参加させた貴族とは別の貴族が、ガルドを参加させたと考えた。
武器商人のヴァリアンは倉庫の番人をしているが、貴族たちの賭けに裏で干渉して儲けている。ガルド自身は貴族とはつながりはないが、チャクラム使いの闘士を参加させた貴族は、勝ち進むのがわかっているので、チャクラム使いに賭けて勝ち続けていた。チャクラム使いを大金をかけて雇っても損はない。
チャクラム使いを雇った貴族の仲間だけが稼いているのがおもしろくない貴族たちは、ガルドにも勝たせる可能性を作ってくれと、武器商人ヴァリアンに裏金を渡した。

「お前は左利きだろう。使え」

投げられたチャクラムの輪の中にジャマダハルの刃を差し込み、後ろ側のグリップを握ると、重ねられた刃は扇のように開く。そうすることで、チャクラムは刃とコの字型をした柄の間にはまり、やがて回転が止まってしまう。
ガルドを狙い放たれたチャクラムが2つとも止められ、ガルドに場外へ放り投げられた。闘技場の壁にチャクラムは刺さった。
チャクラム使いの傭兵の前に、ガルドは自分の左手に握っていたジャマダハルを
床に置き、蹴って滑らせた。

武器商人ヴァリアンはガルドがチャクラム使いの傭兵に、自分の武器を渡すとは予想していなかったので、観戦しながらニヤリと笑った。

チャクラム使いの傭兵座ザルレーは、ガルドに教えた。

「ジャマダハルの刃を広げて閉じる時には、ハサミのように肉を切ることができるのですよ。情けをかけて私に首を切り落とされても恨まないで下さいね」

ジャキッジャキッと刃を広げたり閉じたりして武器の動作確認をすると美青年ザルレーは、ガルドと対峙して軽く腰を落として身構えながら微笑した。
観戦している市民の観客が歓声を上げて会場が盛り上がった。

美青年の闘士ザルレーと逞しく見事な筋肉がついた巨漢のガルド。敗者は勝者に犯されても文句は言えない。
観客たちはザルレーとガルドが命がけの勝負のあと、宿屋で興奮しながらお互いの肉欲をぶつけ合うのを想像している。

ガルドの髪がわずかに切られて舞う。
ザルレはガルドの革鎧を止めている紐を狙い切ってみせ、ガルドに使い方を教えていく。見た目には、熾烈な戦いをしているように見せながら。

ソフィアだけが盛り上がっている観客の中で、嫌そうな顔で苛立っていた。
ザルレーが、ガルドに惚れて戯れているのがわかったからである。
ガルドも傭兵のザルレーを殺す気はないようだった。ガルドの革鎧が落ち、筋肉が隆々とした上半身の肌が露出する。
観客の中には、逞しい男性が好みの貴族が混ざっている。
歓声がさらに高まる。

ザルレか軽快な滑るような動きでガルドの背後に回り込み、背中に抱きつき、喉元を狙うふりをして離れた。
観客には、ガルドが喉元を切られそうになったのを肘打ちを入れて逃れたように見えた。
ザルレはガルドの股間のあたりを軽くなで、ガルドが思わず反射的に肘打ちを入れたのである。

「戦いは興奮しますね。私も興奮しています」

ザルレーはガルドに妖しい笑みを浮かべて話しかけていた。
ガルドはハサミのように切る使い方を身につけたのをザルレーに示すために、ザルレーの服を肌を斬らないように切ってみせた。
ザルレーは最後はガルドに抱き締められながら喉元を切り裂かれてそのまま死んでもいいとさえ思った。

「ガルド、遊んでないで終わらせて!」

観客席で、ソフィアが立ち上がり叫んでいた。ガルドはソフィアが何を叫んでいるかは聞き取れないが妬いているのは察した。
もしもソフィアを大会に参加させていたら、チャクラムで殺されていただろう。
ガルドがチラッと観客席のソフィアの方向を見たので、ザルレーも見て、ソフィアを見つけた。

(今は、私たちだけの時間、恋人でも他の者に割り込ませたりさせません!)

ザルレーが拳を連続で打ち込み、ガルドの頬に浅い傷をつけた。ガルドは身体を揺らすようにして、刺されるのを避けている。

(仲間に加えるとしたら、ソフィアを説得しなければな。腕前はなかなか悪くない奴だ)

ザルレーはガルドに犯されたい。そのまま快感の中に溺れて殺されたいとすら思っている。

ガルドは武器を捨てつかみかかり、ザルレーの握った武器をつかみ回して手首に負担をかけて、握っていられないようにさせ、武器が落ちると、素早く場外へ蹴り出した。
そのまま背後に回り込み、太い腕をザルレーの首に巻きつけた。
血管が圧迫され、ザルレーが微笑しながらうっとりと目を閉じ、ガルドに締め落とされた。

「勝負あり、勝者ガルド!」

審判が宣言すると、立ち上がったガルドは観客席のソフィアに向かって手を上げてやった。


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