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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(後編)-10

(あの淫乱未亡人のことだ、俺を伯爵領から追い出しても、代わりの他のお気に入りがいるはずだ)

ロイドの推測通り、宮廷貴族の子爵ヨハンネスが邸宅に飼われていた。
ミーナにジャクリーヌ婦人の邸宅の情報を探りたいと相談した。
ロイドはジャクリーヌ婦人に邸宅に監禁されたことがあると打ち明けてみた。

「俺はジャクリーヌ婦人に復讐するために、ブラウエル伯爵領に戻ってきた」

正確には捕らえられたロイドを、ジャクリーヌ婦人が絶倫の強姦者という噂をブラウエル伯爵から聞いて、ロイドを罪人として処罰せずに、邸宅でブラウエル伯爵には内緒で、飽きたら処刑するつもりで気まぐれから保護していた。失うはずの命を、ロイドはジャクリーヌ婦人に助けられたともいえる。

ミーナはそんな裏事情は知らなかった。
ベルツ伯爵領で盗賊らしいことは手下たちの話から察したが、女性を狙い強姦する押し込み強盗だとは知らない。
客として相手をした他の男性のたちよりも、ロイドが絶倫であることだけはミーナも実感している。
ジャクリーヌ婦人の邸宅に仕えるメイドのメリッサとロイドがつきあったことがあり、メリッサから絶倫の噂を聞いたジャクリーヌ婦人に呼び出され、邸宅に監禁された。メリッサが逃がしてくれたがそれっきり会えなくなったと、嘘の説明をロイドは話した。
ミーナはロイドに同情した。逃がしてくれた恋人が殺された。ロイドはその復讐のために、胡散臭い連中に恩を売って仲間にしてブラウエル伯爵領へ戻ってきたと思い込んだ。
事実とはかなりズレがあるが、ロイドはミーナの誤解を訂正しなかった。
ジャクリーヌ婦人にロイドは人相を知られているので、行商人のふりをしても、婦人の邸宅には近づけないこともミーナは把握した。

「ねぇロイド、復讐って、ジャクリーヌ婦人を殺すつもりなの?」

自分と手下たちで強姦すれば、ジャクリーヌ婦人を虜にすることができるとロイドは考えていた。ところがミーナが物騒な事を言い出したので、ぎょっとした。

「いや、ブラウエル伯爵が、母親を殺されたら、他の伯爵たちの面目を保つために必ず賊を捕らえて処刑しようとする。ジャクリーヌ婦人が、賊に危害を加えられて金品を邸宅から奪われたら、彼女の面目を保つために事実を隠す。復讐して殺されるつもりはない」
「……そうだよね。恋人が帰ってくるわけじゃないもんね」

ミーナはロイドに、つぶやくように言ってうつむいた。
運命は風のように変わり続ける。
ミーナの運命も、つぶやいたあとロイドの心を慰めたいと思って、そっと抱擁した時に変わった。
メリッサが子爵シュレーゲルと出会うことで、その後の運命が変わったように。
ロイドの運命が変わったことや、ストラウク伯爵領でザイフェルトやフリーデの運命が変わっていくことで、それぞれの運命が変わっていく。

女店主ミランダは、夜の相手をしてくれる酒場娘を紹介して欲しいとメイドらしい女性からチップを渡された。

「詳しい事はお話できませんが、手や口だけで相手をしてくれる若い女性を紹介していただきたいのです」
「それはかまわないけど、相手の首を締めたり、鞭で叩いてみたり、おかしな趣味があるなら、うちの娘たちに相手させるわけにはいかないよ。あと病気持ちも困るわ」
「それに関しては心配ありまそのようなことがあれば報告していただければ、こちらで確認が取れしだい賠償金などの交渉に応じさせていただきます」
「こちらも相手がどこの誰なのかわかっても口外しないこと、あと、手や口だけで相手をすること、できれば若い娘がいいってことね。他に条件はある?」
「ありません。予定として3日後でいかがでしょうか?」
「5日もらえるかしら」
「では、5日後でお願いします」

貴族の客には条件つきで娼婦を探す者もいる。客の出してきた条件で分け前は、ミランダと折半でもかまわないという酒場娘がいれば斡旋する。
酒場娘たちも胡散臭い客や危害を加えられたり、金を払わずやり逃げする客を避けたいので、ミランダから紹介された客の相手をすることもある。
酒場に来ている噂を聞いた客と、酒場娘本人が直接、条件や金額などは交渉することが多い。

「ミーナ、お願いできる?」
「わかりました。なにか困ったことがあれば、ミランダさんに相談しますね」

ジャクリーヌ婦人は、子爵ヨハンネスの調教に酒場娘を利用しようとした。
ミーナはロイドを娼婦と客の関係で考えられなくなったので、他に生活の為の金策が必要だった。

酒場娘ミーナはジャクリーヌ婦人に邸宅のメイドとして雇われると、ヨハンネスの世話係としてジャクリーヌ婦人に弄ばれ、同情から恋に落ちたヨハンネスと一緒に自殺してしまう死の運命にあった。
ロイドがレルンブラエの街へ来て、ミーナと先に関係を持ったことで、その死の運命が変わった。

子爵ヨハンネスを街に案内し、ミーナに料金を酒場の裏路地で渡したメイドのマーサは、暗がりで声をかけられた。

「久しぶりだな、マーサ」

ロイドの声を聞いて路地裏から逃げようとしたマーサは、待機させておいた手下の男たちに捕まり、ロイドの前に引き出された。

「メリッサと俺の関係を、ジャクリーヌ婦人に密告した礼はさせてもらうぜ!」

(ロイドは今ごろ、あのメイドの人をいじめてるんだろうなぁ)

ミーナは子爵ヨハンネスを自分の借家に連れて来て、憂鬱な気分になっていた。ジャクリーヌ婦人に密告したメイドを見つけたから、坊やの方は任せたと手下たちと宿屋の部屋からロイドは出かけていった。
子爵ヨハンネスも憂鬱だった。
ジャクリーヌ婦人から、勝手に射精した罰として娼婦を相手にできるだけ我慢する練習をするようにと命じられていた。

メイドのマーサを宿屋の部屋へ連れ込んだロイドは、ベッドに腰を下ろして待っていた。
マーサは、服を脱がなければ手下に好き放題にさせると脅された。


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