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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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強姦者ロイド-9

(リーフェンシュタール、よくがんばりました。怖いかもしれないけれど、私がついていますよ)

ヘレーネがリーフェンシュタールに、目を細めてにっこりと笑いかけた。

「あれは、バーデルの都で女伯爵シャンリーにつけられたと聞いています。自分では外せないそうです。あれをつけてからは、食事をするように、女を抱かずにはいられないようになってしまったと言っていました」
「そうだろうな。あれは、女伯爵シャンリーにつけられたと、ロイドは言ったのだな?」
「はい、リーフェンシュタール様。牡のリングというものらしいです」
「メリッサ、他に何か知っていることはないか?」
「私の知っていることはそれだけです」

ロイドはリングを装着すると精力が増大する効果について、メリッサには話していないらしいことが、リーフェンシュタールにはわかった。

(そうだ。牡のリングと牝の指輪と呼ばれていた)

リーフェンシュタールが、メリッサの左手の薬指を見せて欲しいと言い、メリッサが膝の上で緊張して握っていた手をテーブルの上に乗せて見せた。
メリッサの左手の薬指に、牝の指輪はつけられていない。

「ジャクリーヌ婦人も、指輪をつけてはいないか?」
「はい。大奥様も指輪は身につけておりません」

(そうだ。10日以上、離れて暮らすことはできないはず。ロイドの伴侶はメリッサではないのか?)

リーフェンシュタールは、ロイドに牝の指輪をつけられる自分を一瞬、思い浮かべてゾッとした。

(いや、今の私は変化しても男性だ。牝の指輪はつけられる心配はない)

リーフェンシュタールもため息をついてから、カルヴィーノに話しかけた。

「あのロイドという男から聞き出してもらいたいことがある。あとで私室へ来てくれないか」
「わかった」

リーフェンシュタールとカルヴィーノの会話が終わると、リヒター伯爵が話し始めた。

「ジャクリーヌ婦人のもとへ、メリッサを帰せば本当に殺されるかもしれぬ」
「父上、それはロイドとメリッサが任務に失敗したからですか?」
「そうではない」

メイドのエマが、リーフェンシュタールに巻かれた書状を手渡した。

「それはロイドとメリッサが、パルタの都の小貴族である証明書だ。メリッサはルーク男爵の姪で、ロイドは婿養子ということになっておる。だが、メリッサはルーク男爵とは面識もなく、名前も知らない。婿養子のロイドが面識がないことはあり得なくもない話だがな。リヒター伯爵領へわざわざ小貴族の証明書を発行し、持たせて潜入させたが、偽物の証明書である証言ができる者はメリッサしかおらぬ。パルタの都からリヒター伯爵領へ赴任したことに、その書状ではなっておる。ブラウエル伯爵領から来たことを隠蔽する書状でもある」
「つまり、任務に成功しても、失敗しても、リヒター伯爵領で小貴族が赴任先で失踪したことにするために始末されるということですね」
「おそらくルーク男爵はジャクリーヌ婦人に頼まれ、その証明書を売ったのだろう。ロイドが罪を犯すとは知らずに。ロイドとメリッサを、ザイフェルト夫妻に危害を加えたと処罰すれば、ルーク男爵にもその罪がおよぶ。フリーデの脅迫に成功して、利用したあとザイフェルトがロイドやメリッサを訴え出ても、ルーク男爵が、ジャクリーヌ婦人の罪をかぶることになる。偽物の証明書だと証言するメリッサがいなければな」
「このルーク男爵は、いくらで証明書をジャクリーヌ婦人に売ったかわかりませんが、ロイドが処刑されたら、ルーク男爵も死罪ということにされますね」
「ルーク男爵が誰かに恨まれていて、宮廷から排斥するために、別の官僚がジャクリーヌ婦人と共謀して発行した証明書の可能性もある。ルーク男爵からジャクリーヌ婦人につながるようなら、すぐに足がついてしまうからな」

リヒター伯爵とリーフェンシュタールの会話を聞いているメリッサも、ジャクリーヌ婦人から渡された書状を見つめて青ざめていた。

「これがあればメリッサもリヒター伯爵領で小貴族として暮らせるわ。ロイドを婿養子とするのが条件だけれど。私の邸宅ほどではなくても、邸宅が用意され、ロイドにはリヒター伯爵から仕事としてパルタの都に手紙を運び、また、パルタの都にある伯爵領官邸からの書状をリヒター伯爵へ届ける役目が任される。ブラウエル伯爵領を通過するとき、その書状を私に見せに来るように、ロイドに伝えなさい」

ジャクリーヌ婦人から、ロイドをおさがりで引き取れば、メイドではなく小貴族の婦人としての生活が保証されると聞かされ、悪い話ではないと思った自分の愚かさをメリッサは悔やんだ。

「父上、書状の情報漏洩や書き換えの疑いも、ルーク男爵がかぶることになりますね」
「他の伯爵領にもメリッサのような役目を与えた者を、ジャクリーヌ婦人は潜入させているのかもしれぬ」
「他の伯爵領へひそかにメリッサを逃がすことも難しいですね。この書状の内容が虚偽であることを我々が証明しても、メリッサは公文書偽造の罪で、ルーク男爵から訴えられて罪人とされかねない」
「なかなか手の込んだ嫌がらせを仕掛けられたものだ。リーフェンシュタール、メリッサの婿養子のロイドを処罰するのも難しい。モンテサンドなら、どうするであろうな」

リーフェンシュタールは考えがまとまらず、ヘレーネの隣で黙り込んだ。
カルヴィーノとシュルーゲルも同様で、名案は浮かばない。
カルヴィーノとしては、不審者の狼藉者を無罪放免にするのは納得しかねる。まして、リーフェンシュタールに危害を加えかけた相手である。

ヘレーネはこの時、蛇神の呪物でフリーデを強姦させて、結婚の儀式の法術が穢される運命の流れもあったことや、その流れを変えたことで、何ができるのかを考えていた。
ザイフェルトにフリーデを旅に同行させて、リーフェンシュタールとすり替えていなければ、フリーデはきっと強姦されていただろう。


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