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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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婚姻儀式祝福魔法とパンケーキ-7

翡翠色の髪と瞳。
雪よりも白い肌。
しっとりとした声色。
エルフ族でもこれほどの美女はいない。

リーナが軽く手を握ってくれて、話しているとき涙がこぼれてきて会話が途絶えると、そっとセレスティーヌを抱擁して背中を撫でてくれる。
セレスティーヌの大好きな花の匂いがほのかにする。世界樹の白い花の薫りを思い出すと、セレスティーヌの気分が落ち着いてくる。

「また、マキシミリアンさんのいない時に来ますね」

リーナが帰ったあとも、なんとなく、まだ世界樹の花の薫りが残っている気かした。そのままベッドで目を閉じているうちに、気がつくとセレスティーヌは夢もみないぐらいぐっすりと眠り込んでいるのだった。

賢者の石からリーナの身体が生成されてあらわれた時、一糸まとわぬ生まれたままの姿で、大広間にはそよ風と、ほのかな花の薫りが漂っていた。そのまま倒れかけたリーナをマキシミリアンが抱きしめた時、めまいがするほど胸が高鳴り、我を忘れそうになったと話していた。
それは、セレスティーヌにもわかる気がした。そのままマキシミリアンがリーナに手を出さずに耐えたことを褒めてあげたいとさえ思う。

マキシミリアンが、毎日部屋から出かけて、何をしているのかをリーナがセレスティーヌに教えてくれた。

リーナをダンジョンから外へ連れ出せる方法はないか、ダンジョンの元管理人のミミック娘と調べているらしい。
ダンジョンで生成された魔獣や魔物娘たちは、外へ出られない。リーナも外へ出られない仕掛けがある。単純にその仕掛けを解除するだけでは、リーナだけではなく、大陸各地のダンジョンで生成された魔獣なども放出されてしまう。

マキシミリアンは、拗ねている妻のことだけを考えていられない。夫のマキシミリアンは大賢者なのだとセレスティーヌは感心した。
蛇神の異界へつながる呪力の門が存在できている条件が失われてしまえば、門は消失する。
リーナが蛇神の花嫁として存在し、贄にされる世界。この条件が世界から失われることで、蛇神の異界へつながる門が完全消失できるのかまでは確証はない。
しかし、何もしなければエルフの王国やダンジョンのような特殊な場所以外には障気が蔓延していく。
マキシミリアンは、すてに始まってしまったこの世界の変革を阻止するため、自分のできることに取り組んでいる。

古代エルフ族が、魔法の技術によって強大なる力を望み、それが心によって世界の在り方を変えるものだと理解した時、魔法の技術の多くを放棄することを選択した。古代エルフ族が歴史上から去り、残された古代エルフ族の末裔であるエルフ族は、世界樹から生み出されてきた。
それは、古代エルフ族が魔法の技術によって自分たちがもたらした世界の変革の歪みを監視し、調整する役割のために生み出されているのではないか。マキシミリアンとベッドの上で、語り合った夜をセレスティーヌは思い出した。

「エルフ族に役割があるなら、貴方たち人間族の存在意義は何なのかしら?」
「世界の変革を起こす原因そのもの。変革が人間族だけでなく他の残された種族を繁栄させる福音となるのか、禍事となるのか。滅亡しない限りどちらかの運命を選択し続ける存在。愚者の群れさ!」
「マキシミリアン、貴方も愚者なの?」
「僕は世界で一番の愚者だよ」

セレスティーヌは、マキシミリアンが自分自身のことを愚者だと語った事を思い出した。
自由奔放で、常識にとらわれない発想ができる。時には、やんちゃな幼い子供ぐらいわがままと思えるような行動や危なっかしい行動もする事もあるので、目が離せない。
そういう意味では、たしかにマキシミリアンは愚者かもしれないとセレスティーヌは思う。

(そうだ、マキシミリアンは、世界で一番の愚者だった。絶対に絶望してあきらめたりしない人。無理だと思って、女遊びに走ったわけじゃなかったんだわ。協力が必要だった。リーナちゃんの服だって、自分じゃ、セストみたいに作れないから……そうだったのね!)

大陸全体を巻き込む異変。
大規模な大きな世界の変化でも、マキシミリアンがあきらめて、ただ女遊びをしていたわけではなかったらしいとセレスティーヌは気づいた。
寝室の扉を大きく息を吸って、セレスティーヌは思いっきり開けた。

「マキシミリアン!」
「えっ、ど、どうしたの、いきなり」
「私にも、一緒にダンジョンの謎を解くのを手伝わせてくれる?」
「セレスティーヌ、とりあえず、食事にしようよ」

テーブルには、マキシミリアンが作った見た目はあまりきれいではないが、美味しそうな匂いの料理が並んでいた。
寝室から出てきたセレスティーヌに久しぶりに抱きつかれ、マキシミリアンが驚いていた。

ダンジョンから離れたリヒター伯爵領でヘレーネたちが行った結婚式の効果で、マキシミリアンが恩恵を受けていた。

(この人を理解できるのは、私しかいないのに……馬鹿なことをしていたのは、マキシミリアンじゃなくて、私のほうだったわ!)

「ねえ、セレスティーヌ、せっかく君に食べてもらいたくて、僕が作った料理が冷めてしまう」

長いキスのあと、マキシミリアンが言った。セレスティーヌは、マキシミリアンの耳に唇を近づけて囁いた。

「うん、ありがとう、マキシミリアン、私、わがままで、ごめんね」

マキシミリアンがセレスティーヌの頭を優しく撫でた。ミレイユが子供の頃、マキシミリアンはミレイユの頭や髪をそっと撫でていたのをセレスティーヌは思い出して、くすくすと笑った。

食事を終えたマキシミリアンとセレスティーヌは一緒に食器を片づける。マキシミリアンは食器洗いのコツをすっかり身につけていた。
セレスティーヌは水気を拭き取り、食器棚へ収めるだけでよかった。

「セレスティーヌ、僕らと同じように、どこかで、きっとたくさんの夫婦がこうして、食器を一緒に片づけしたりしてるんだろうね」


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