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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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聖獣師と獣戦士と村娘-8

前世からの因縁、アモスの火の神殿の神官の運命を生まれ変わっても持つヘレーネの行く先には、恋の悩みを抱える女性がいる。
宮廷の重鎮モルガン男爵を暗殺したザイベルトと子爵シュレーゲルもまた、リヒター伯爵領へ向かっている。
人妻フリーデは、夫はすでに死んているか、生きていても再会できないと思っていた。しかし、夫のザイベルトと再会できる喜びと子爵シュレーゲルとの恋に悩んでいた。
子爵シュレーゲルは、腹ちがいの姉ヘレーネへの片思いと、人妻フリーデとの恋に悩んでいる。
子爵リーフェンシュタール、学者モンテサントの弟子にして、繊弱な貴公子然とした外見の若者は、カルヴィーノが、騎士シモンであることや、シモンを愛していた巫女だった前世の記憶から、カルヴィーノを親友としてだけでなく恋人として愛し始めていることに戸惑いを感じていた。
どれほど愛していても、リーフェンシュタールとは、カルヴィーノがシモンだった時のようには交わることはできない。
リーフェンシュタールは、なぜ自分は女性に生まれてこなかったのだろうと、悩んでいた。
心には女性だった前世の恋を抱えているのに、身体は男性なのである。
リーフェンシュタールは、カルヴィーノから嫌われるのを覚悟で唇を奪った。唇を重ねた瞬間、カルヴィーノの前世であるシモンとの口づけを思い出し、胸が熱く震えた。
カルヴィーノは、任務でリヒター伯爵領から出ていて不在である。
自分との奇妙な関係を避けて、もう戻らないのではないかとリーフェンシュタールは不安になっていた。そのせいか、生贄としてナイフで腹を裂かれ殺害された前世の最後の記憶の悪夢までみるようになってしまった。

(考えすぎだ。もし、カルヴィーノが出て行くなら、私に言ってから出ていくだろう。彼はそういう性格だ)

ヘレーネは、テスティーノ伯爵からカルヴィーノ宛ての手紙をあずかっていた。王国の異変についてとベルツ伯爵領令嬢ヘレーネを息子に紹介する内容となっている。
ヘレーネは、リヒター伯爵領の領主リヒターがいる街を目指した。
途中の村でリヒター伯爵について村人たちに話を聞いてみたが、見たことはないが、良い領主様だと思うという話ばかりである。
村には貴族は暮らしていない。リヒター伯爵領も、ベルツ伯爵領と同じように、平民が農地を管理していて、貴族は納税に関すること以外は、村人たちに自治させているらしいことがわかった。
村に貴族が暮らしていれば、リヒター伯爵への面会も話を通しやすかったのにとヘレーネは思いながら、貴族が暮らしているトレスタの街へ、レチェと歩いて行く。ストラウク伯爵領へ障気は流れ込んでいるらしく、リヒター伯爵領には、特にレチェが餌を狩るような場所は見当たらなかった。

子爵シュレーゲルは、ベルツ伯爵領を離れトレスタの街に滞在していた。若い子爵が近隣の伯爵領へ見聞を広めるために旅行へ出るのは、特におかしな話ではなかった。ベルツ伯爵は、人妻フリーデを密かに追放したので、あとは他の伯爵領からシュレーゲルの妻となる女性と婚約させるだけだと考えていたので、シュレーゲルが人妻フリーデと駆け落ちさえ考えていると見抜けなかった。
シュレーゲルは、カルヴィーノがフリーデを見つけてトレスタの街へ戻るのを待っている。

「ヘレーネ様も、トレスタの街に向かわれるのですか?」
「ええ。あと、私はもう出奔した身ですからヘレーネ様と呼ばなくてもよいのですよ」
「貴女の母上には、私が子供の頃の恩がある。ベルツ伯爵の御令嬢だから、ヘレーネ様と呼ぶわけではありません」

ベルツ伯爵の子息メルケルの死の真相について、ヘレーネは思いがけずザイベルトから、詳細を聞くことができた。この時まだザイベルトは、モルガン男爵の暗殺の件はヘレーネに隠した。
ヘレーネは、テスティーノ伯爵に旅先で出会い、子爵カルヴィーノへの紹介状を持ってトレスタの街へ向かうところだとザイベルトに話した。
学者モンテサントや子爵リーフェンシュタールや剣客カルヴィーノについて、ザイベルトからどんな人物なのかを聞くことができた。

「カルヴィーノは、テスティーノ伯爵の子息だったのですね。本人は山育ちの村人だと言っていましたが」
「それは間違いではないでしょう。ストラウク伯爵領の山の村で、カルヴィーノという人は母親や妹と暮らしていたということですから」
「テスティーノ伯爵領ではなく、ストラウク伯爵領で彼は育ったのですか?」
「そのようです。ただし、それは母親がストラウク伯爵領の人で、テスティーノ伯爵領の街暮らしを嫌がって子供を連れて故郷へ戻ったせいで、テスティーノ伯爵とカルヴィーノの関係が悪いということではないそうです」

ベルツ伯爵領には戻らないと決めているザイベルトとヘレーネは、村人として暮らすとしたらここは悪くないという意見が一致した。

「私が伯爵領を出る時には、残念ながらフリーデについては消息不明ということになっていました。子爵になったシュレーゲルなら、何か情報をつかめるかもしれませんね」
「そうですか、残念です。しかし、私の兄弟子たちがきっとフリーデを見つけ出してくれるでしょう」
「貴方の師匠モンテサント。ぜひ、会っておきたい人物ですね」
「変わった人ですが、悪人ではありません。ただし、ヘレーネ様、今すぐは止めておいたほうがいいかと。パルタの都は遠征軍の駐留軍が占拠しています。宮廷官僚が遠征軍の兵糧を横領していたことが判明して、行くあてのない遠征軍がパルタの都を占拠した状況です」
「モンテサントは無事でしょうか?」
「伯爵領へこの事実を知らせる通知をパルタの都から出してましたから、無事でしょう。騎士ガルドには、それなりに人を見る目があったということです」
「貴方の師匠は策師ですね。噂を聞いた人たちが、バーデルの都では暴動を起こしたのかも」
「しかしひどいありさまでした。しばらくバーデルの都は、使い物にならないでしょう」


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