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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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伴侶の選択-3

ロエルは相手の心の中にある想いや感情を感知することが、自分自身にとってとても大切だと思える感情が、魔力の感知や誘導にも大きく関係すると、マルティナに説明した。

「細工師は、物が世界に存在するということを感じて、その物が存在するということが、自分にとってどんな関係があるかということをまず考える」

ターレン王国にいる念力で魔力を込める剣技の達人たち、ストラウク伯爵、テスティーノ伯爵、子爵カルヴィーノが、ロエルの考えを聞けば、その考えに同意するにちがいない。
戦う相手を斬り殺すことや、交わっている女性を感じさせることは結果としてそうなるだけで、相手と自分の関係を考えることがまず最初にある。結果だけを頭に思い浮かべてみても、どうやってそうなるようにすればいいのかわからなければ、ただの妄想にすぎず、思念としては頼りなくあやふやで、魔力を込めることもできない。それなら恐怖や興奮の感情のほうがまし、結果だけを思い浮かべる妄想は雑念だと彼らは言うだろう。

ロエルはマルティナと談義しているあいだ、騎士団の武器庫にある武器や防具などの装備品の手入れを、同行させた弟子のセストに頼んでおいた。
ロエルはマルティナと一緒に、武器庫に昼食を3人で食べに街へ出るために声をかけに行った。
そこでマルティナの目の前で、わざとセストに刀剣を鞘ごと曲げさせるのを見せることにした。

「これを曲刀にして。鞘から抜けなくしたらダメ。失敗したら私が手直しする」

セストは何度も、鞘から剣を抜いてみては戻すのを繰り返したあと、目を閉じて刀剣の柄と鞘の両端を握っていた。
ゆっくりと刀剣が鞘ごと曲がっていく。

「こんな感じなら、剣はちゃんと鞘から抜けるんじゃないかと」
「もっと曲げても大丈夫」

ロエルはセストから刀剣を受け取り、目を開けたまま同じように両端を握って曲げを大きくした。
マルティナが剣を抜いてみると力をかけずに、すうっと抜き出すことができた。

「セスト、よく見ながら曲げればいい。こわがって目をつぶるからわからなくなる」

そう言ったあとロエルは曲刀を直刀に戻すとマルティナに言った。マルティナは曲げられ抜きやすくなった刀剣を他の隊長たちにも見せたいと目を輝かせながら抱きかかえていた。

昼食を街の食堂で食べ終えると、セストにどうやって刀剣を曲げたのか、マルティナは質問した。

「両端をお二人とも握って、力をかけている様子もなく曲げていました。あれは両手から同じぐらいの魔力を流しこんだのですか?」

セストはロエルの顔をチラッと見た。ロエルは両手でカップを包むようにして、お茶をふうふうと息を吹きかけ冷ましながら、ちびちびと飲んでいる。
セストの視線に気がつくと、ロエルがうなずいたので、マルティナにセストなりに説明してみることにした。

「お師匠様みたいにうまく説明できないかもしれないですけど、いいですか?」
「はい、お願いします」
「何回か剣を鞘から抜いたり戻したりして、どうやってこの剣が鞘におさまって引き抜けるのかを考えました。剣の刀身の厚さに合わせて、鞘が二枚の厚い板を彫ってみぞを作って金具で合わせてあるから、みぞを通って刀身が収まるんだろうとか。先に剣ができていて、鞘はあとで合わせて作ったのかな、とか作られた工程を想像しました。鞘の中に埃とかついていたら抜きにくいだろうとか、何回か抜いたり戻したりして、剣を使う人がこれを腰につけるのか、背負うのかも考えてみたりもしました。あれはたぶん、腰にベルトとかで吊る感じ装着して使うものですよね?」
「そうです。剣技の訓練を受けたことがあるのですか?」
「いいえ、まったく訓練なんて受けたことはないですよ。吊られている真っ直ぐのものを引き抜くのに動かす腕の動きよりも曲げたほうが小さな動きで引き抜けるかと思ったところで、お師匠様が目で早くってせかしていたので、目を閉じて集中して、これは柔らかいと思いながら曲げてみた感じです」
「金属の硬い剣ですよ、柔らかいと思うだけで簡単に曲がるのですか?」

ここでセストは少し困って、またロエルの顔を見つめた。ロエルは何も言わずにうなずいただけだった。

「前にお師匠様から鉱石から金属の元を取り出すとき、石じゃなくて柔らかくてさわり心地のとても良いのだと思ってみるように教えてもらいました。手のひらが、なんとなくあたたかくなる感じがしたらもう曲がっているという感じで、手から柔らかいという気持ちや感じを物に伝えているんだとは思います」
「柔らかくてさわり心地の良いものですか……ネコを撫でている感じは気持ち良いと思いますが、私にも曲げることはできるようになるでしょうか?」
「ネコは狭いところになぜか入っていると体がすごく柔らかいなって思うし、撫でたときの毛とか体温のぬくもりも、とても気持ちいいですね。でも機嫌が良くて、そばに来てくれて、さわらせてくれた時だけですけどね」
「あら、あなたもネコがお好きなのですか?」
「はい、好きですよ」

マルティナがセストもネコ好きだと聞いて、にっこりと微笑みを浮かべた。聖騎士ミレイユや騎士団の隊長たちは、マルティナがネコ好きだとは知らない。
セストは、ロエルの気まぐれなところや甘えたい時だけそばにくるのをネコにたとえて、遠回しに話していた。
マルティナは素直な性格らしく、セストが誰をネコにたとえて話しているかまったく気づいていない様子だった。

「マルティナ、魔力を込めるという考え方から、ちょっと離れたほうがいい」

このままセストに話させておくと何を言い出すのか少し心配になったので、ロエルが会話の流れに割り込む感じでマルティナに話しかけた。
マルティナの恋愛対象は女性だと、ロエルは気づいている。セストに親しみを感じても、マルティナからセストに恋をする心配はしていない。

ロエルは自分の魅力に、無頓着なところがある。


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