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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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子爵シュレーゲル-2


「この子猫は助からない運命しかなかった。野良猫の母猫は、子猫を産んでも体の弱い子猫は育てないで置き去りにします。残酷と思うかもしれませんが、そういうものなのです」

「お母様、でも、この子を助けてあげたいの」

「ヘレーネ、運命は常に変わっていくものなのです、そう、風のように。おや、今は、あなたと共に生きる運命が、この子にはできたようです」

その時に拾ってきた足の先だけ白いが他は真っ黒な子猫は、レチェという名の使い魔として、今でもヘレーネの側についている。

「レチェ、小さな羽のある小人を見つけても、食べてしまってはいけませんよ」
「うにゅ〜」
「食べたらおしおきですからね」

足元をついてきて見上げるレチェに、立ち止まったヘレーネが言った。

こうして、女性だが子爵候補のヘレーネが辞退した結果、シュレーゲルは15歳で子爵となった。
ヘレーネはシュレーゲルより10歳も年上なのだが、その見た目はとても若く見える。それは砂漠の民の女性の特徴を継いでいるからだった。ベルツ伯爵やシュレーゲルが見ても、ヘレーネは20歳より若く見えた。

「シュレーゲル、このままでは、お前は地位も捨て、ヘレーネを追って旅に出てしまいかねない。その気持ちはわからないでもない。だがヘレーネは、普通の女ではない。あきらめよ」

1ヶ月後、シュレーゲルは再びベルツ伯爵の自室へ呼ばれて警告された。シュレーゲルは遊び相手の兄と慕っていた姉を失って、ひどく落ち込んでいた。
腹違いの息子と娘が婚姻することを、ターレン王国では禁じてはいない。貴族の血統を絶やさないようにしてきた慣例から、それは認められていた。
しかし、父親と娘との婚姻や同じ母親から生まれた息子と娘の婚姻は禁じられていた。

「父上、僕はヘレーネと結婚できます。それに容姿がめずらしいからといって、普通の女ではないとは。それに父上もアリーダ様を、妻妾となさったではありませんか!」

「ちがうのだ、シュレーゲル。アリーダは、まだ孕んでいるうちに、娘が産まれると私に言った。私はアリーダにとってヘレーネを生ませるために使われたにすぎないと思っている」

ベルツ伯爵はアリーダが、あり得ない秘術で村人たちを治療するのを何度か見てきた。アリーダでも治療できない者もいて、最後に苦痛をやわらげてやり家族と別れを惜しんていたという噂話もベルツ伯爵は聞いている。

「この国の法、いや、この世界の定められたことに逆らって変えてしまう力を持つという意味で、ヘレーネは普通ではないと言ったのだ」
「父上、そんな信じがたい奇妙な話をして、僕がそれを信じてヘレーネをあきらめると思っているのですか?」

シュレーゲルはベルツ伯爵にそう言ったが、気になって領地の平民たちの村へ、新しい地主たちの様子を子爵として見に行くついでに、村人たちの話を会って聞いてみた。

すると、アリーダやヘレーネの話ではなく、兄の子爵メルケルが落馬して死んだのではなく、地主のザイフェルトの妻であるフリーデを犯し、子爵メルケルは激怒したザイフェルトに撲殺されたことやそのあとでザイフェルトとフリーデは捕らえられて、追放されたのだという話をシュレーゲルは聞かされた。

(ヘレーネが旅に出たのは、これを知って、この領地にいることが嫌になったからではないのか?)

「子爵様、この話をわたしたちがしたことは、伯爵様には、どうか言わないで下さいませ」

「もちろんだ。ああ、それにしても兄がそんなことをしていたとは!」

「どうあれ、人を殺めることは許されざることです。ザイフェルトやフリーデを伯爵様は処刑なさることもできたのに、そうなさらずに、追放で済していただいたのは優しいことだと思っております」

子爵とはいえ、まだ15歳のシュレーゲルは、村人たちの前で、頭を下げて謝罪した。それを見て、地主になった3人の娘たちの婿たちは困ってしまった。

「子爵様、もしも、妻たちを気に入って妻妾となされて、我々をその後も地主としてこの村を任せて下さるのでしたら、誰も生きて行くのに困ることはありません。どうか、頭を上げて下さい」

「しかし、貴族でも、他人の愛する妻を奪うなど」

「奪ったあと、知らぬ存ぜぬでごまかして、慰み者になされるだけなら、それは潔くありません。しかし伯爵様のようにずっと愛して、娘たちが生まれたら、婿と生活の糧を与えて下さり、気にかけて下さっているのを、悪いことだと思われますか?」

3人の地主となった娘たちの母親たちがアリーダとヘレーネの話を、子爵シュレーゲルに聞かせようと呼ばれてやって来て、婿たちと娘たちがとても困っているので、仲裁するように話に加わった。

その後、かつてアリーダと幼いヘレーネが暮らしていた家、アリーダが亡くなるとヘレーネが猫に一匹飼って暮らしていたという家に案内してもらった。
扉や窓は開くことができなかった。鍵がかかっているわけではないらしい。ヘレーネが、村人たちに言い残して言ったのは、家ごと焼き払いでもしない限り、中に入れない仕掛けが施してあるということだった。

子爵シュレーゲルは、村人たちから、アリーダやヘレーネの不思議な話を聞かされながら、料理や酒をふるまわれてかなり酔ってしまった。その夜、シュレーゲルは、村はずれにある家で泊まることになった。
村はずれの家に酔ったシュレーゲルが運ばれた。このあたりのことは、あまりよく覚えていない。
気がつくと、シュレーゲルは服を脱がされ、裸でベッドに寝ていた。
そして、村の宴会では見かけなかった若い女性が添い寝をしていた。

「え、あ……これは?」
「まだ朝ではありませんよ、子爵様」

シュレーゲルは微笑を浮かべた若い女性に、体をそっと撫でられた。

「ああ、そうだ、僕は酒を飲んで」
「気分は悪くありませんか?」
「眠気がすごいけど、大丈夫だよ」


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