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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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モルガン男爵-5


かつて、蛇神の呪いから人々を解放するために神殿を破壊した者たちが、のちにターレン王国を建国した。その末裔である王や貴族たちは今では、その霊感を失ってしまった。
辺境の異変を、自分の呪力の増大によって察知したのは、奴隷商人である黒薔薇の貴婦人シャンリーだった。

獣人族の赤髪に狐耳のアルテリスは、呆けてしまった僧侶リーナの恋人である青年レナードを連れ歩き、ターレン王国を放浪の旅を続けていた。

アルテリス自身は強い力はない。だが僧侶リーナと出会い、目に見えない存在があることを知った。
普通の者にはわからない声で囁く、手のひらに乗るほどの大きさしたかない羽を持つ幼女の姿のもの、生前は辺境の村娘だった5人の亡霊と一緒に協力して、ゼルキス王国のハンターである青年レナードを国境の宿場街で見つけ出した。
まだこの時、ガルドは騎士となっておらず、遠征軍の志願兵の募集も行われていなかった。

僧侶リーナのために、呆けてしまったレナードを治療できる者がいないか、アルテリスはターレン王国で探し歩いていたのである。
連れている可愛らしい姿の亡霊たちは、神聖教団の僧侶が常駐して布教しているゼルキス王国では祓われてしまうと、見逃してくれた僧侶リーナから聞いていたので、ターレン王国で青年レナードを治療できる人はいないか、噂を集めながら旅を続けていた。

青年レナードには、山犬か狼の頭から作ったかぶりものをかぶせ、首輪と鎖もつけて、奴隷に変装させてアルテリスは連れて歩いている。
ターレン王国の穀倉地帯の住人たちは、獣人族の行商人から、遠い異国では奴隷を連れて旅をする者がいると聞いたことがあった。頭部以外は人の姿の青年が首輪をつけられ、鎖でつながれているのを見て、誰でも初めはぎょっとした表情で驚くが、アルテリスに奴隷だと説明されてひとまず納得した。

女領主シャンリーが、奴隷の人身売買を始める前である。通過した土地の住人たちは噂には聞いてはいたが、レナードは彼らが初めて見る奴隷だった。

アルテリスは連れ歩く犬頭の奴隷レナードではなく、5人の亡霊に気がつく人がいれば、レナードの治療の方法を知っていると期待して探し歩いている。
もしも、女領主シャンリーがアルテリスと出会っていれば、逃げ出したレナードの気配に気づき、5人の亡霊を霊視すると、アルテリスもふくめて、まとめて始末しようとしただろう。

アルテリスの幌馬車が、穀倉地帯の街道を、ゆったりと雲の流れる青空の下で進んで行く。
アルテリスは辺境で行っていたように、賭けに勝ち続けて、獣人娘の娼婦として路銀に不自由することなく、ターレン王国の旅を続けていた。

アルテリスに勝負を挑むのは、平民階級の地主たちであった。
勝負に負けた地主たちは、犬頭の奴隷はアルテリスの相手を続けて、呆けてしまったのだという噂を酒場で人に聞かせるのだった。

「獣人娘はいくら見た目が良くても、ありゃ、だめだめ、あえぎ声もまさに獣の雄叫びって感じだしな」

負け惜しみで好き放題なことを言っているのだが、その結果、国境付近や王都には娼婦がいて、金を払うと後腐れなく、すっきり射精させてくれる職業の女性がいると噂では聞いたことがある者たちは獣人娘の娼婦に会ってみたいと思うのだった。

働く若い村娘たちに手を出すと、地主は村娘を妾として世話をしなければならない。子供が生まれたらなおさらである。そうしなければ、村娘の親族から地主の妻に報告されてしまい、別の男性を夫にするから家から出て行けと言われる。
地主の権利を継いでいる女性と結婚して後継ぎになった者も多い。また、領主の隠し子の娘が、地主の権利を与えられていることがある。

地主たちは、妻たちに浮気が発覚しないように村娘たちに手を出す者もいれば、家系に誇りを持ち、まったく浮気をしない者もいる。
家系を気にしている地主たちは、ターレン王国の平定の時、ご先祖様は活躍して地主として管理を任されたのだと、子供たちに語り継いできた。
「我々は平民階級だが、今でも王の臣下である」と貴族よりも家系を重んじる者たちと、なりゆきで婿養子として地主になった者たちとの間で、その考え方に大きな隔たりがあった。

モルガン男爵をふくめた男爵という爵位や、ガルドの爵位である士爵は、一代限りの爵位でもあり、血縁の後継者に継がせることもできる爵位でもあった。
領主である伯爵の爵位は、受け継ぐ領土と合わせて受け継がれる。子爵は伯爵の後継者である者に与えられる。子爵が小伯爵とも呼ばれることがあるのは、そのためである。そして、討伐軍の指揮官が男性しか認められてなかった慣例は、伯爵の後継者である子爵も男性という慣例として残った。
だから、王の妻妾のシャンリーに伯爵の爵位が与えられた時、それまでは娘には子爵の爵位を与えずに地主として嫁がせるか、他の伯爵家や男爵家に嫁がせてきた領主たちは、伯爵家の誇りと血統の時代が終わったと感じた。

まだ我々は王国に忠義を持って仕える特別な臣下だと信じる誇りのある地主たちと、今ては宮廷から耕作地を任されている官僚にすぎないと衝撃を受けた領主たちとの間にも、自分たちの立場についての考えかたに、大きな隔たりができた。

誇りもなく単純に支配者という認識しか持たない子爵たちは、自領の平民階級の人々を虐げる者もあらわれた。

ベルツ伯爵の後継者、子爵メルケルに愛する妻フリーデを犯されたことに、若い地主のザイフェルトは激怒した。
ザイフェルトとフリーデは、ベルツ伯爵に捕らえられた。

平民階級の地主が貴族階級の子爵を殺害したことは罪として、ベルツ伯爵に裁かれた。貴族の子爵が地主の妻を犯したことを裁く法はない。

「ザイフェルト、フリーデをお前に返してやり、地主の地位は剥奪になるが、我が領地からの追放で済ましてやってもよい。ただし、条件がある」

このザイフェルトが、モルガン男爵を暗殺した。


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