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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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モルガン男爵-1

影の宰相と呼ばれるモルガン男爵は、王の廷臣たちの代表といった立場の人物である。

ターレン王国にも、4代目のモーリッツ王の時代までは宰相の地位を持つ者がいた。ターレン王国の内乱が平定され、伯爵の爵位を与えられた王の腹心たちが、領主としての自治権を行使して、治安維持と開発を進める時代になった。
それまでは、王都で宰相が指示を出し処理していた政務が軽減され、現在、13代目のランベール王の時代まで、宰相の地位は空席となっている。
先代ローマン王は、宮廷の会議に参加することがなく、ランベール王も即位してゼルキス王国への遠征を会議の場で宣言してからは、出兵前の軍事会議にも参加しなかった。

平民階級の者たちを志願兵として募るのは、ランベール王からの王命であった。また、騎士ガルドから2000人の兵糧3ヶ月分の要求が出されたのをランベール王は承認した。

(なるほど、この女が王に入れ知恵をつけていたのか)

王にモルガン男爵が拝謁すると、その場にいた黒いドレス姿のシャンリーが謁見の間に先にいた。シャンリーは、王の前で、後発隊の駐屯地の提供をモルガン男爵に申し入れてきた。

「モルガン男爵、良きに計らえ」

ランベール王はそう告げると玉座から立ち上がり、そのまま退室してしまった。モルガン男爵は、謁見後すぐに王城から後宮へ招かれた。モルガン男爵は緊張していた。
王以外の男性が、後宮に立入ることは常識としては許されない。このまま後宮で殺されるか、衛兵に捕らえられてしまうのではないかと考えてしまった。
モルガン男爵を案内してきた女性の衛兵たちが、扉の外では待機している。

「安心しなさい、モルガン男爵。ここでなら私と何を話していても、宮廷とはちがい気にすることはありません。ランベール王が腹心の貴方のために、後宮の私の部屋のみ招待するのを許可して下さったのですから」

モルガン男爵は、後発隊の滞在費用の1ヶ月分を提供する提案を受けた。
1000人分の1ヶ月分の滞在費の見返りに、ターレン王国でいずれ王命によって宮廷の会議で協議されることになる法の改正を進めて欲しいとシャンリーは言ったあと、王がシャンリーに渡した密書をモルガン男爵に手渡し確認させた。

(書状は本物のようだ。平民階級の奴隷商人が王の寵愛を受けているとは)

モルガン男爵は、奴隷商人の噂を聞いたことがあった。

「平民階級の者など信用できるか」
「ふふっ、貴族らしい答えね。貴方が先代のローマン王を支持する廷臣たちを、うまく排斥できたのは誰のおかげかわかってるのかしら。そろそろ効き目が現れる頃ね」
「うぅっ、体が痺れて」
「謁見の前に貴方は宮廷で食事をした。今回は痺れ薬だけれど、貴方の派閥ではない連中は私が始末したわ。もっと感謝されても良いと思うわ」

先代ローマン王の廷臣たちは、穀倉地帯の領主たちとつながりがある者が多かった。領主の子爵は、親の伯爵の爵位と領土を譲り受ける後継者だが、次男や三男は男爵の爵位のある家の令嬢と婚姻などで爵位を継いだ者もいる。
穀倉地帯の領主の下で、農地を管理している地主たちから、息子たちにも管理する農地を与えたいという意見を伯爵たちは受け入れ、宮廷へターレン王国の領土拡張案を出してきたことがあった。
宮廷会議で協議されたが、先代ローマン王が却下した。
ローマン王はすでにゼルキス王国のレアンドロと、辺境を領土とする政策を進めていたからである。公平に半分では承諾できぬとローマン王は、レアンドロ王に伝えていた。

モルガン男爵の派閥は、穀倉地帯の領主や地主とは関係ない、王都の貴族たちである。モルガン男爵たちの派閥は、穀倉地帯の領主たちに実権を奪われるのを危惧していた。

(まさか、この女、先代のローマン王を小娘に殺させたのか?)

先代ローマン王は毒殺された。王を毒殺した使用人の小娘は、王都の広場で火炙りで処刑された。
先代ローマン王の廷臣たちの代表といえるディオン男爵は、王の崩御の直後に、王族の血統の遠縁にあたる伯爵家から新しい王を選出する意見を出していた。
ディオン男爵は、その後すぐに病死している。

(このまま、私は殺されるのか?)

モルガン男爵の背中に冷たい汗が流れ、口元の髭も唇も震えた。もう、舌まで痺れている。

その時、扉を開けて室内に入ってきた人物がいた。絨毯の上に倒れているモルガン男爵の青ざめた顔を、片膝をついて、その人物はのぞきこんだ。

(ランベール王!)

「モルガン男爵、このまま死ぬか、それとも生きて余に忠誠を誓うか。忠誠を誓うなら目を閉じてみよ」

モルガン男爵がまだ動くまぶたを閉じると、ランベール王の高笑いと、室内から出て行く扉の閉まる音が聞こえた。

「解毒薬を飲ませてあげるわ」

妖艶な奴隷商人シャンリーが、身を屈めて唇を重ね、口移しでモルガン男爵の口の中に何かを流し込んだ。
舌も痺れていて味もわからないが、モルガン男爵は解毒薬といわれた液体を必死に飲み込んだ。

ガルド謀叛の知らせをモルガン男爵に告げたのは、国境の衛兵ブルーノだった。
ブルーノは、唇の端は切れ、左腕は折られ、服の下は鬱血してあざだらけで、あばら骨はひびが入っているようだった。夕暮れ時、王都の大門の衛兵が、ふらふらと近づいてきた傷だらけの男に声をかけた。

「モルガン男爵にお伝えすることが」

それだけ言うと気絶してしまった男を衛兵は王城には報告せずに、モルガン男爵の館へ運び込んできた。
負傷者が。モルガン男爵の名を出したので門番の衛兵は、人目につかぬように、幌馬車で荷物を運んで来たように見せかけて館の裏口から、傷だらけのブルーノを運び込んだ。
館の使用人に介抱させると、ブルーノは意識を回復した。
ガルドの手下らしい者たちに、衛兵ブルーノは襲撃されて負傷した。
そして、モルガン男爵の館へ伝えに行けと脅された。


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