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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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参謀官マルティナ-5


将軍クリフトフは、レアンドロ王と騎士団参謀官マルティナから、作戦を説明され、すぐに賛同した。
レアンドロ王が考えていた挟撃作戦よりも、いくつもの利点があるのが、クリフトフにはすぐにわかったからである。

国境に主力のゼルキス王国軍を置き、敵軍が丘陵側に撤退する時だけ、追撃のために進軍する作戦は、補給の確保という点で敵軍よりも有利である。
行軍距離も最短で、途中に拠点を作る必要がない。

ゼルキス丘陵側には森林側とちがい、村はなく、ダンジョンがあるだけで、兵糧の補給には適していない。だが、国境から近ければ有利である。

周辺の村からの買い付け、王国で依頼した行商人たちによる国境から拠点までの輸送、敵の補給部隊や拠点からの略奪。
できるだけ自国から離れずに、兵糧の補給を安全に確実に行えるかどうかは、兵の士気に大きく影響する。

王国から依頼された行商人は、自国から近い安全な拠点までは、食糧を運び込んでくれる。
だが、ゼルキス王国にはハンターたちがいる。行商人を使わなくても、国境からニアキス丘陵の戦場までなら、命がけで兵糧を運搬してくれる。

次にレアンドロ王の安全を確保することは重要である。もしも、レアンドロ王が討たれてしまえば、戦場で形勢が有利だったとしても、全軍撤退しなければならない。レアンドロ王が戦場に出ることで自国の兵士の士気は、かなり高揚するのはわかっている。だが、クリフトフは、親友のマキシミリアン公爵から、レアンドロ王の補佐を頼まれており、王を危険にさらすわけにはいかない。
王が指揮している部隊の被害が大きく士気が下がると、自国の軍全体の士気が下がる。良い意味でも悪い意味でも、影響力が強すぎる。

聖騎士ミレイユの不在が悔やまれる。アレンドロ王が指揮を取るよりも、聖騎士ミレイユが指揮を取れば、兵士の士気はもっと高揚する。

将軍クリフトフが、マルティナの立案した作戦で最も気に入ったのは、騎士団の隊長たちの遊撃隊のオトリとして、ゼルキス王国軍が使われていることである。

敵軍を小部隊で撤退するふりをして誘い込み、側面や背後を隠れていた大部隊で叩いたり、退路を断つのが、よく使われるオトリ作戦である。

たしかに目の前の国境を守備する大部隊を撃破すれば勝利だと、敵軍を誘き寄せるにはこれ以上のオトリはないだろう。

奇襲が成功して敵の主力部隊を国境まで追い詰めている、まさに勝利を目前にした戦況で、まさか本国が陥落するとは誰が考えるだろう。
そのあとの敵軍の恐慌はものすごいものがあるだろう。こちらが降伏を提示すれば、兵士たちはあっさり受け入れるかもしれない。

本国を奪還するために撤退する時は、攻めて来た時よりも、兵士たちは追い詰められる。本国からの兵糧の供給が断たれているからだ。

敵軍がニアキス丘陵で、兵糧があるうちに決着をつけようとしても、こちらに国境のまで戻られたら、敵軍は兵糧不足で詰む。撤退すらできなくなる。

ゼルキス王国の国境へ攻め込む時、帰還のことを考えて、ターレン王国軍は森林側に、いくつも拠点を作って来るだろうと、クリフトフは考える。
もし、クリフトフがターレン王国の国境を攻めるとすれば、ゼルキス王国軍も野営地と兵糧の備蓄の拠点が、敵からは見つけにくい森林側から攻めるだろう。

「参謀官マルティナ、森林地帯で敵軍が籠って遊撃戦を仕掛けられたら、こちらも被害が大きくなるから、丘陵地帯側に敵軍が撤退した時だけ追撃するのか?」

「それは森林側で蛇神の祟りが起きているからです」とは参謀官マルティナは、将軍クリフトフにあえて教えなかった。

「進軍してくる時は森林側で軍を進めて来るかもしれませんが、撤退は丘陵側に敵軍は動くでしょう。ターレン王国の王都を陥落したゼルキス王国軍が、次は撤退する自分たちを、森林側で待ち伏せすると警戒するからです」

「丘陵側を撤退したほうが、森林側よりも途中で補給はできなくても、移動距離は短縮できる。たしかに丘陵側なら待ち伏せされていれば、森林側よりも早く気がつくことができる。丘陵側で待ち伏せされていたら、すぐに森林側へ逃げ込んでも遅くないということだな」

「深追いすると、森林側に逃げ込む可能性は高いです。傭兵ガルドは、村を焼き討ちしたあと、ゼルキス王国には潜伏しませんでした。ターレン王国や森林側にかなり詳しい人物なのでしょう」

「あと、魔法障壁とは、今回の戦に何の役に立つものなのだ?」

神官マルティナは王都ハーメルンに暮らす人たちに、蛇神の影響が出ないように結界を強化しておきたい。
最悪の場合、王家の伝承のメスのドワーフのように蛇神のしもべに全身を支配された兵士が出現した時に、王都ハーメルンに侵入されて、疫病のように住人が悪影響や呪いを受けないようにしなければと警戒している。

「辺境、それも森林地帯では疫病が発生しているのです。それの対策です。ターレン王国の兵士が病にかかっていて、ハーメルンの都の人たちに病が広がるといけないので」

マルティナが、霊感能力のない将軍クリフトフにもわかりやすく説明するために苦労していた。
アレンドロ王がニヤリと笑い、口を出さずにマルティナの話を聞いていた。

「その病は、ターレン王国の兵士と戦をする我々にはかからないのか?」

「もしも病が悪化した時は、マルティナが治癒してくれる。そのために将軍クリフトフの軍師として、私がマルティナを任命したというわけだ」

アレンドロ王が、クリフトフを納得させるため、マルティナに話を合わせた。

霊感能力がほぼ皆無の者たちであれ、あまりに強い怨霊に狙われたり、呪いの影響を受けて、寒気、頭痛、吐き気、といった体調不良や、幻覚や幻聴、恐怖などの感情にとらわれることがある。

クリフトフが、目に見えないものを信じようが信じまいが、そうなったら、僧侶や神官が対応するしかない。


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